九州旅客鉄道 農業推進室長 
内野豊臣

2011年度計画の3億円弱から3年後には10億まで売り上げアップが目標。

現在、農業に関するすべてのシステム管理を担当している経営企画部農業推進室長の内野豊臣もまた、鉄道土木の技術者だった。畑違いの農業への異動を命じられたのは、11年秋のことだ。

「率直なところ不安でいっぱいでした。けれども、半年農業をやってみて、いまでは会社で一番面白い仕事をやらせてもらっているという気持ちになっている。社内の意思決定は早いし、世の中に貢献していると実感できる仕事です」

11年から販売を始めた「うちのたまご」もまた、ミニトマト同様、超近代的な設備の中でつくられている。卵生産者の先輩、伊勢豊彦が代表を務めるセイアグリーシステムより技術指導を受け、飯塚市内の開放型鶏舎で育てている。糞の処理をベルトコンベヤーで行うというように衛生管理を徹底した鶏舎である。魚粉、大豆など自然の原料を飼料とした鶏卵は一個60円と高価だが販売は堅調だ。

そこでは唐池の思いが具現化されている。

「消費者は手間に対してお代金を払う。手づくりでひとつひとつつくったものに対しては、多少お金を払っても欲しいと思う人はいる。手間隙かけて高い品質のものをつくる。それが儲かる農業です」


左/博多駅構内にある「うちのたまご」直売所。1個60円という高付加価値な卵を販売。卵かけごはんのイートインもできる。
右/JR九州の新機軸、農業の中核事業「トマトjr.農園・玉名」の朝田広之所長。元・新八代駅の駅長から文字通り畑違いの分野で挑戦を続ける。

現在、JR九州が手がける産品は、甘夏、にら、ミニトマト、卵、さつまいもの5品。唐池の命(めい)は、「好物のカレーライスを食べたい」である。つまり、玉ねぎ、じゃがいも、人参、そして米を自分たちでつくろうというのである。そこには「荒れ地を耕しきちんと栽培していけば、九州で食料自給率100%も可能」という唐池の理想も込められている。

いまはまだ基礎づくりの段階で、これから徐々に地域の農家と融和しながら事業の拡大を図っていき、数年後の黒字化を目論む。

が、もちろん、利益率数%といわれる第一次産業だけにとどまっているはずはない。企業体力を生かす形で、二次産業、三次産業あるいは農産物を加工食品化する六次産業への参入も当然視野に入れている。事実、卵は、プリンやミルクセーキに姿を変えてJR博多駅構内の直営店で販売され、卵かけごはんもイートインできる。いずれは、JR九州のサプリメントなどもお目見えするのかもしれない。