売り上げ横ばいとされる鉄道業界の中で、JR九州の躍進が目覚ましい。赤字路線を抱えつつ、地の負を利に変える逆転の発想で経営体質を改善。2016年度までの上場を目指す、同社の挑戦を追った。

プチトマト、卵……農業に未来を託す

鉄道運輸事業が売り上げに占める割合は、4割にすぎない。残りの6割の事業をどう伸ばし、育てていくかにJR九州の命運はかかっている。

鉄道事業での売り上げは4割のみ

JR九州がいま、鉄道運輸以外の事業で最も力を入れているのは農業だ。10年、大分の農家の協力を得てニラを生産し始めたのを契機に、その生産拠点を徐々に拡大している。

11年秋、3億円を投じてつくられた熊本県玉名市のミニトマトの生産ハウスもそのひとつ。地元JAと協力してすでに4種のミニトマトを出荷し始めている。2ヘクタールの敷地に約3万5000の独立ポットを配置。温度管理はもちろん灌水から肥料まで、そのほとんどを最新鋭の機械でシステマチックに管理している。

農園の所長を務める朝田広之は、10年3月まで九州新幹線の新八代(やつしろ)駅長だった。農業経験はない。が、「やりがいはある。販路も自分たちで開拓していけば利益は上がるし、いずれブランドとして確立していきたい」と朝田は意気込む。

農業進出を図った背景を九州旅客鉄道(JR九州)の唐池恒二社長はこう説明する。

「九州には休耕田が多いんです。それは寂しいな、ならばJR九州が空いている土地を利用して、付近に住むOBを活用したりしながら農業を拡大できないか、という思いで参入した。それはすなわち地域の活性化にもつながるわけです」