パチンコだけがずっと低調

だが、同じギャンブルでもパチンコはずっと低調で、コロナ禍では毎年15%減するような危機にある。ヒマになったから賭けをするようになった、という話でもないのだ。スポーツくじや宝くじも上がってはいるが年1~3%の成長にとどまる。

図表1でみると、競馬のなかでも地方競馬、競艇、競輪、オートレース、この4種目がこの3年間で毎年15~20%といった急成長を見せてきた。

JRAの電話・インターネット投票会員数は、2019年・約447万人→2020年・約506万人→2021年・約561万人と3年連続で増加傾向である。

どの公営競技も1990年のバブル期の消費額には達していないが、2010年を底としてこの10年間は、消費額は増加傾向にあった。

つまり「10年かけてネット化を整備し既存ユーザーが掛け金を増やす中、コロナ禍で新たな参加者も増やし、市場が成長した」というパチンコ産業から見ればうらやましすぎる状況が浮かび上がってくる。

11年連続で売り上げを伸ばすJRA

競馬市場に注目してみよう。

JRAの事業収入はここ10年で右肩上がりとなっており、昨年は約3兆2539億円で、11年連続の売り上げ増だった。

また、地方競馬も好調で2022年の売上額は約1兆651億円で、91年の記録を31年ぶりに更新し、また初めての1兆円を突破している。

JRAのHPより

好調の理由はネット投票だけではない。それ以前に始まった新しい投票法が市場拡大の下地になっている。

JRAの売り上げのピークは1997年の4兆6億6166万円。この前年に行われた有馬記念では、レース売り上げが875億円となり1レースの売り上げとしてギネス記録となっている。

だが、翌年からJRAの売り上げは2011年まで14年連続で前年を下回る低迷期となる。その中でJRAは2002年に3連複、2004年には3連単の取り扱いを始めた。

新しい投票法が広げた競馬の楽しみ方

3連複とは、1着、2着、3着となる馬の馬番号の組み合わせを的中させる投票法で、着順は問わない。3連単は、1着、2着、3着となる馬の馬番号を着順通りに的中させる投票法だ。

それまでに販売されていた単勝や複勝(3着までに入る馬を当てる)などに比べれば難易度は高い。だがそれゆえに的中時の払い戻しは高額になりやすい。競馬ファンの射幸心をあおる投票法といえる。

さらに2011年にはWIN5が登場する。WIN5とはその名が示すとおり、5つの指定されたレースの1着馬をすべて当てる馬券だ。「たった100円が最高6億円に変わる馬券」と宣伝され、これまでの馬券の中で最も高額を得られるものだった。

初心者でも「ランダム」という買い方を指定することで、コンピューターまかせで購入ができ、宝くじ感覚で買うお客も現れた。

それまでの競馬は、競走馬の特徴や血統、さらには競馬場のデータの収集が必要で初心者には手が出しづらかった。新しい投票法の登場によって、誰でも簡単に購入が可能で、高配当を得る機会ができたのだ。競馬をスポーツ的に楽しむお客だけでなく、ゲーム的に遊ぶお客にも対応したことで、客層を広げた。