NTTドコモを代表とするグループは6月、国立競技場の運営をめぐる優先交渉先となった。NTTドコモは有明アリーナやIGアリーナの運営にも関わっている。金融アナリストの高橋克英さんは「NTTドコモに限らず、民間企業が主導するスタジアム・アリーナ建設と運営は各地で行われている。ビジネスとしての採算や成長性を重視しており、地域活性化にも貢献する可能性が高い」という――。
国立競技場
写真=共同通信社
国立競技場

全国で97件の新設・改装計画が進む

2024年8月、閉会したばかりのパリ・オリンピックにおける日本選手や日本チームの大活躍もあり、スポーツの持つ力に改めて魅せられた読者の方も多いのではないだろうか。

アマチュア主体の五輪だけでなく、日本ではプロスポーツも盛んだ。伝統と盤石な人気を誇るプロ野球や、誕生から30年以上経ったサッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグやラグビーのリーグワン、バレーボールのVリーグなどが多くのファンを魅了している。

こうしたなか、地域の活性化や、さらなるファンの拡大などを目指し、日本全国で、サッカー、バスケットボールなどのプロスポーツチームの本拠地としたり、試合を開催するための最新鋭のスタジアムやアリーナの建設ラッシュが起きている。

スポーツ庁によると、全国のスタジアム・アリーナの新設・建替構想は、2024年1月時点で、アリーナ・体育館で54件、スタジアム・球技場で42件と、合計96件にも上っているという(スポーツ庁「全国のスタジアム・アリーナの新設・建替構想の現状」2024年1月時点)。日本のスタジアム・アリーナ市場は政府の経済政策の注力領域の一つにも挙げられており、今後、さらなる増加や機能充実が見込まれる、成長市場になっているのだ。

自治体にとっては地域活性化の切り札

例えば近年では、2020年1月Jリーグの京都パープルサンガの本拠地でもあるサンガスタジアム by KYOCERAが開業、2021年2月にはバスケットボールのBリーグの琉球ゴールデンキングスのホームコートである沖縄アリーナが竣工、2024年2月には、Jリーグのサンフレッチェ広島の本拠地となる約3万人収容のサッカースタジアム「エディオンピースウイング広島」が開業している。

この他にも全国津々浦々で、サッカーやバスケットボールなどプロスポーツの本拠地としての新設や建て替えの計画が進んでいる。その多くは、国や地元自治体が主体であり、実際に、建設費を公費で賄い、地元自治体などが、所有し運営するという従来型の公共事業の一環として行われているものが多い。

スポーツと地域活性化は最強のコンテンツであり、多くの地域住民の支持を受けやすく、逆に文句や反対を受け難いものだ。最新鋭のスタジアム・アリーナを建設し、プロスポーツチームの本拠地を誘致することは、観光・訪問客増加や定住人口増加、地元経済の潤いなど、地域活性化策を模索する地元自治体にとっても切り札となっているのだ。