ジブリパークの「安売り」を褒めてはいけない
日本のテーマパークは、その内容の充実具合に比べると、かなり「安売り」をしているのだ。例えば、としまえん跡地に6月13日オープンした「ワーナーブラザーススタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」の入園料は6300円だが、本国イギリスにあるものは51.5ポンド。日本円で約9000円だ。
日本が世界に誇るコンテンツであるジブリ作品のテーマパーク「ジブリパーク」は一番高いセット券でも3500円である。アメリカが「ディズニー」というコンテンツを安売りせずに、ブランド化できたことと対照的に、ジブリはスタートから、サンリオピューロランド以下の「安売り」をしてしまっている。
一見すると、これは「さすがジブリ! 子どもや庶民の味方だ」となるが、実はまったく逆だ。日本のアニメのトップが、「自分たちの価値はそんな程度ですよ」と安売りを始めてしまったら、それ以下に続く日本のアニメ業界全体の価値が下がってしまう。
実際、日本のアニメーターは低賃金重労働という劣悪な労働環境が問題になっており、中国企業に優秀な人材が引き抜かれる。海外でアニメ制作者は高額を稼げるクリエイターだが、日本ではテレビ局や映画配給会社の「下請け」扱いで地位が低いのだ。
業界トップのディズニーはもっと高級化すべき
こういう問題を解決するには、実力のあるトップが「値上げ」をしていくしかない。かつてプロ野球の落合博満選手が年俸を上げていったように、松本人志さんが「入場料1万円」のライブを開催して注目を集めたように、トッププレイヤーは「安売り」を否定して、業界の価値を上げていかなければいけない。
そういう意味では、ディズニーももっと「高級化」して、テーマパークのみならずアミューズメント産業、観光レジャー産業の「価値」を上げていかなければいけない、と個人的に思う。
ちょっと前、ネットでハウステンボスのアフター5パスポート(午後5時以降の入場料とアトラクション)が4000円というのが高くて「ボッタクリ」だと叩いている人がいた。
「公園に毛が生えたようなもので、大して手もかかってない」から暴利だというのだ。こういう人は、無料で入れる自然の公園だって、清掃や樹木の伐採や管理、道路や施設の補修で莫大なカネがかかることをおそらくご存じないのだろう。
そして、ハウステンボスのクラスの巨大テーマパークの景観を維持して、広大なイルミネーションやアトラクションの保守点検をして、客が心地よく過ごせるために、どれだけの人々が働いているのか、ということを考える想像力もないのだろう。