デパート屋上の小さな遊園地が消えた理由

40年、日本のテーマパークを牽引してきたオリエンタルランドはそれがよくわかっている。一見すると、価格を下げることは消費者に優しいようだが、実は「テーマパーク」の価値を下げて、安全性もないがしろにする。だから、どんなに「庶民切り捨て」と批判されても、高価格を維持する。

もちろん、ただ「高価格」をキープするだけでは「ボッタクリ」なんて言われてしまうので、時代の変化に合わせて付加価値を上げていく。外食や小売の場合、「創業当時から変わらぬ味で30年」とか「伝統を守る」みたいなことが言えるが、テーマパークはそれができない。

「西武園ゆうえんち」が昭和レトロな街並みやゴジラ・ザ・ライドをつくったり、ディズニーがパークを拡張したりしているように、まるで巨大な「生き物」のように常に進化を続けていくしかない。だから、進化ができないものは滅んでいく。かつてデパートの屋上にあった小さな遊園地や、入園料が数百円とかで遊べた“庶民と寄り添うテーマパーク”が消えてしまったのは、時代がどうしたとかいう話ではなく、「進化できなかった」からなのだ。

「価値」を下げる進化などあり得ない。だから、テーマパークが「安売り」を始めた時というのは、そのテーマパークがゆるかに「死」に向かっているということなのだ。

安い遊園地は「安いニッポン」の象徴

こんなことを言ったら、ディズニーファンからボロカスだろうが、個人的にはディズニーはもっと高級化路線を突き進んでもらいたいと思っている。

テーマパーク業界のトップが「価値」を引き上げることで、観光レジャー業界全体の価値向上につながり、「サービス業」全体の価値を上げることになるからだ。

なぜサービス業の価値を上げなくてはいけないのかというと、これが今の「安いニッポン」の根本的な問題だからだ。

なぜ日本経済がずっと低迷しているのかというと、日本のGDPの7割を占めて、就業者数の7割が働いているサービス産業(第3次産業)がパッとしないからだ。

生産性が低いので、不眠不休で働いても生み出す「付加価値」が低い。そうなると当然、賃金も低い。就労者の7割が低賃金ということなので、いつまで景気がよくならない。

だから、サービス業の「価値」を上げていくことが急務だ。「安売り」と相性の悪いテーマパーク業界はそのエンジンの役割が期待できる。が、残念ながらまだ「安さ=正義」の同調圧力に屈している部分がある。