必要なのは「優等生」ではない

サービスを利用し始める際の値段を無料もしくは低く抑えて、まずはお客様になってもらい、その後で積極的にサービス内容を改善していくことで、結果的にお客様を繋ぎとめ、より多くの売上を上げることを狙っているわけです。

お客様から見れば、たとえ少しぐらい値上がりしても「それだけの価値があるし、使わないといけないから」と納得感があるから払い続けていくのです。即ち、一般的にサブスクリプション型といわれる月払いのサービス・ビジネスでは、提供されるサービスの内容によって価値が増大し、それが収益の増大に繋がっていくという、従来の日本企業とは全く異なった発想に基づいたビジネスモデルだということです。

ここから先のVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性、将来予測が困難)の時代には、従来の顧客、サービス提供者など、それぞれの関係性が大きく変わっていきます。環境変化の少ないスタティック(静的)な時代では、昔の受験勉強のように「これだけ覚えておけばOK」というような前例踏襲型ビジネスアプローチで何とか乗り切れたと思いますし、日本企業にはこの優等生タイプが多かったのかもしれません。

しかし、これから求められるのは、変わっていく環境において、自分としてどう考え、必要に応じて自分自身をどう適合させていくのかを明確にコミュニケートできる能力ではないか。これは個人の集合体としての組織である企業でも同じことではないかと思います。

個々のエネルギーを組織の力に変えるためには

私はよく大企業のトランスフォーメーションの在り方について、「羊の群れ」に例えることがあります。

個々の羊にはやりたいこともあって、時には道草を食ったりしてしまうのですが、最後は集団の向かっていく方向に沿って動いていくことで、群れ全体としてのエネルギーを発揮できる。羊飼いは個々の動きの違いには多少なりとも目をつぶってでも、全体としての進むべき方向をしっかりと示し続けていく。ここでも組織の構成員である一人ひとりの個人がしっかりとした意思を持って集団としての行動に参画するということが必要かと思っています。

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時田さんはダボス会議でお会いした経営者の話をされましたが、違いがあるとすれば「視座」ですよね。視座=目線の高さを、どう持つかということでもあります。

ですから、「自分はこういう役割だから、これをやっておけばいいんだ」という仕事のやり方では、今のような変化が大きい時代に対応しきれない可能性が大です。「言われたことは、やっているからね」というところで終わってしまい、先に進まないからです。

これを繰り返していては、我々自身も日本企業も競争力を維持できないし、強くならない。結果として、企業の稼ぐ力もなくなっていく。今は何とかなっているように見えていても、自分たちの将来の社会のためにリスクを取ってチャレンジする人が少ない企業は環境変化の中で次第に競争力やリスペクトをも失い、最後は淘汰されてしまう。