円が重なるところが「異質との出会い」
次に、マネジャーの円の外側にもう一回り大きな円を描いてみます(図表3)。すると、二重円ができ上がります。
最初の円の中心点は結論であり、主張です。その主張を導く際には、「観察事実」と、何が原因でそういう観察事実が起きたのかという「思考回路」の両方を考慮したはずです。
それも、複数個の「観察事実」と、複数個の「思考回路」の中から、重要だと思うものを選択して結論である主張を出したはずです。それが最初の円の中身です。
その最初の円の周りに、主張を出す時には捨ててしまった他の複数個の「観察事実」と「思考回路」を書き入れて、円でくくるというイメージです。いわば思い込みを捨てて、こういう考え方もあるかな、と柔軟に考え方を広げるということです。
そして、マネジャーのあなたのこの周辺円を、メンバーの円と重なるところまで広げて描いてみましょう。昔懐かしい、ベン図のでき上がりです。この2つの円の共通集合が、マネジャーとしての「異質との出会い」です。
つまり、自分の主張や興味関心の輪を広げてみるという思考が大事だということです。そして、その重なった部分にはきっと、新しい刺激があるはず。そう考えることが重要です。
この作業によって、私も自分の考え方を何度も変えたことがあります。
ただ、それがメンバーの主張の丸飲みであったケースは少なく、彼らのアンテナに引っかかった「観察事実」や「思考回路」の一部を自らの思考に取り込んで、自分の領域に入れ込んでしまうことで新しい結論が出てくる(図表4)。
そう、まさに「ブレインジャック」です。
話を聞きながら、自分の思考が進化していく快感
メンバーと話す際には、このように自分の考え方、意見をしっかり持った上で、柔軟に外延を広げようという心の準備をしておくといいでしょう。
メンバーの「観察事実」「思考回路」の面白いところを取り込み、消化することで、異質の刺激を受けて、異質を取り込み自分の考えが進化するのが楽しくなるはずです。
メンバーとの共通集合を見つける際には、「どうしてそういう結論を導いたのか?」という過程を尋ねることが極めて有効です。
「あなたの主張(点)は、××だね。どうして、そういう結論になったか話してくれませんか?」(円を構成する「観察事実」と「思考回路」を尋ねている)などと聞くのです。
そして、メンバーの説明を聞きながら、頭をフル回転させて、自分の頭では捨ててしまった、重要でないと判断した「観察事実」や「思考回路」との接点がないか、自分の考え方を進化、拡充させるのに使えないかを必死で考えます。
そして、共通集合が見つかったら、今度はメンバーに向かって、「面白いものを見つけてきたね。その観察事実は、こういうふうに考えても面白いんじゃないかな。いずれにしても、君の観察力の鋭さのおかげで、仮説が一歩進化した。ありがとう」と伝える。そう、まさに双方向のやり取りが生まれるのです。