10年で1000冊を読んできた
私が自己啓発本の研究を始めたのは2014年。だからこの特異な文学ジャンルと付き合い始めて、かれこれ10年以上の月日が経過したことになる。その間に読んだ古今東西の自己啓発本の数はおよそ1000冊。10年で1000冊ということは1年に100冊、つまり平均して毎週2冊ずつ、10年にわたって自己啓発本を読み続けたわけだ。天文学的数字とは言わないが、ある程度根気がなければ到達できない数字ではある。そしてその数は今もなお増え続けている。
では一体なぜ私はこれほど根気よく自己啓発本を読み続けるのか?
役に立つからである。私は自己啓発本を研究対象として客観的に読んでいるのではなく、自己啓発本を読むことが自分の人生のプラスになるから読んでいるのだ。そう、自己啓発本を読むことには、実利があるのである。
最初の衝撃:ジェームズ・アレン『「原因」と「結果」の法則』
最初に自己啓発本は役に立つと思ったのは、ジェームズ・アレンの『「原因」と「結果」の法則』を読んだ時だった。まだこの分野の研究を始めて間もない頃の話である。
アレンのこの本が主張しているのは、「あなたが今日置かれている状況は、すべてあなた自身が過去に選択した思考と行動の結果だ」ということ。時の運とか、偶然とか、そういうものは一切関係がなく、ただ自分が蒔いた種を刈り取っているだけだと。
「楽な道」を選び続けた私が気づいたこと
これを読んで、はじめのうちこそ「そうかあ?」などと疑っていたが、やがて「その通りだ!」と思うようになった。自分のそれまでの来し方を腹蔵なく振り返って見た時、確かに自分は人生の分け目となるような重要な岐路に出くわすたびに、楽なほうの道を選んでいたことにハタと気づいたのである。自分の人生が自分で望むほどうまく行っていないのは、運とか偶然のせいではなく、そうなるように自分で選択していたからなのだ。
この発見は、自分としてはかなり衝撃的であり、かつ痛みを伴うものであった。が、同時に私の心は晴れ晴れとし、得体の知れない気力がモリモリと湧いてきた。自分の身に起こったすべてのことの原因が自分自身の選択にあったのなら、同じく自分自身の選択によって未来を変えることもできるはず。