僕自身はその結果に納得

最初から分が悪いことはわかっていました。それでも住民の賛否を二分する一大決定を、リーダーたる僕が自分の“正解”を振りかざし、一方的に決定していたらどうでしょう。おそらく反対派の人々は長年にわたり不満をくすぶらせたままだったでしょう。それではよりよい大阪にはなりません。だからこそ大阪市民による投票というプロセスを入れ込んだのです。

結果的に僕が正解とみなした大阪都構想は、住民投票で葬り去られましたが、これだけのプロセスを踏んだがゆえに、僕自身はその結果に納得しています。今後大阪市民の意識が変化していけば、将来大阪都が誕生する可能性はまだまだあるとも感じています。

いかに優秀な人間でも、たった1人の見識や判断には限界があります。僕自身は、マクロン大統領の行動力や果敢な挑戦力を評価しています。リーダーたる者、自らが信じた道を、反対の声が起きるや否や路線変更するようではいけないとも思っています。

ただし、1人のリーダーがあたかも神のごとく“正解”を国民に示し、強権的に国家運営をするのは、健全な民主国家の姿とは言えません。それでは現在のロシアや北朝鮮と同じです。いわゆる受験勉強の勝ち組エリートは、“正解”をピンポイントで示す能力に長けていますが、それだけではいけません。これからのリーダーは、広く周囲の声を聞き、周囲と協働しながら、メンバーの納得感を醸成していく「プロセス」を重視する姿勢を大切にしなければなりません。

(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路)
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