ナプキンをなかなか変えられない
筆者が運転していたのは荷台に屋根が付いていない「平ボディ」と呼ばれるトラック。
荷降ろしをする際に荷台に上がるためには、片足をタイヤにかけ、勢いをつけながらもう片足で荷台に乗るのだが、女性だからなのか、筆者が腹の痛みでふらついていたからなのか、優しい得意先の男性は、私が落ちたときのために、後ろで支えようとして「くれる」。
言わずもがな、荷台に乗ろうとする人間の尻の位置は、支えようとする人の顔部分にくる。各得意先ではこういう優しい男性が多かったのだが、ナプキンがなかなか変えられない生理の時は、特にそれが嫌だった。
その工場には、女性トイレがなかった。あってもそこから歩いても数分かかる事務棟まで行かねばならない。
そんな現場が、今でもごまんとある。
ビニール袋に用を足す女性ドライバー
こうした女性ドライバーならではの苦労を話すと、「だったら辞めろ」「だから女は使えない」という言葉が聞こえてくる。
「辛い仕事は男性にまわって来て、女性は楽な仕事ばかり」「女だからってだけですぐに手伝ってもらえる」「きつい仕事を男ばかりにさせるのはフェアじゃない」と。
が、「トラガール」ではなく「女性トラックドライバー」として働いている人たちには、誰一人として「手伝ってほしい」とか「仕事を選びたい」という気持ちはない。自らその仕事を選び、強いプライドをもってブルーカラーの現場に立っている。
「女性はペットボトルに用を足すことすらできない」と先述したが、ある女性元トラックドライバーは、「私は緊急の時、こうして用を足していた」と教えてくれた方法が衝撃的だった。
それがこれだ。
ビニール袋の取っ手を前後で持ち、用を足す。
無論、現場の女性全員がここまで精神的に強いわけではない。
が、現場を知らない人たちが、のんきに「トラガール」などという言葉で飾り立てるほど現場は「ピンク色」ではないし、言葉のイメージづくりよりも、まず先にやるべきことがあるだろう、と筆者は強く思う。