同じく男性社会といわれている「自衛隊」の女性率ですら約7.9%であることからも、いかに日本の女性トラックドライバーが少ないかが分かる

これほど女性ドライバーの割合が少ないのは、他でもない。「過酷」だからだ。

何をどこにどう運ぶかにもよるため、その程度には幅があるが、なかには数十キロもする荷物を手で積み降ろしたり、1週間以上家に帰れなかったりする現場もある。男性でも大変な仕事だ。体力的・筋力的に不利な女性はより過酷になる。

にもかかわらず、毎度女性トラックドライバーは、ことあるごとに業界のPR要員に仕立て上げられる。

幼稚性の意味をもつ「トラガール」などという言葉を使って。

国が進める「トラガール推進プロジェクト」の異様

慢性的な人手不足を補うため、国土交通省が2014年に立ち上げたのが「トラガール促進プロジェクト」だ。

国土交通省が2014年に立ち上げたのが「トラガール促進プロジェクト」のウェブページ
国土交通省が2014年に立ち上げた「トラガール促進プロジェクト」の旧ウェブサイト。

昨年6月に刷新されるまで旧サイトにあったのは、ピンク色の丸文字で書かれた「現場に華やぎを与える女性トラックドライバーが増えてきた」という言葉と、「女性の女性による女性のためのトラック」として開発された、隅から隅までピンク色した水玉模様のトラックだった。

華やかな現場を演出しようとしているが、人手不足解消につながるのだろうか。
国交省「トラガール促進プロジェクト」の旧ウェブサイトより。華やかな現場を演出しようとしているが、人手不足解消につながるのだろうか。

言うまでもなく、現場の女性トラックドライバーは、「現場に華やぎを与えるため」の存在ではない。「荷物を運ぶ労働者」として現場に立っている。

何度とない指摘により、ようやくそのサイトは刷新されたが、なぜかこの「トラガール」という言葉だけは残った。

彼女たちは、社会インフラを支え、自分や人の命を危険にさらしかねないプレッシャーと戦っている。

ホワイトカラーの女性を指す「OL(オフィス・レディー)」でさえ死語となって久しいなか、なぜ国やメディアは、危険の多いブルーカラーの現場で働く女性には「ガール」という幼さを強調する言葉を使い続けるのか。

現場の女性ドライバーは周囲から舐められ続ける

現役の女性ドライバーに聞くと、批判的な意見によく接する。

「トラガールだのなんだの『女』を強調する呼び方はやめてもらいたい。ただでさえ数が少なくて目立つのに、そういう目で見られたりすると仕事がやりづらい」
「この言葉のせいで女性トラックドライバーがみんな若いと勘違いされる。現場で『今来たドライバー、トラガールじゃなくておばさんなんだけど』という倉庫作業員の話し声が聞こえてきたことがあった」

本人が「自分はトラガール」と思うのは勝手だが、国やメディアが「女性ドライバー」を「ガール」と表象し続ける限り、この業界も、そして現場の女性ドライバーも舐められ続ける。