トラックドライバーの人手不足が深刻になっている。2024年には運転手の残業時間が年960時間に制限され、今まで通り荷物が運べなくなる恐れがある。元トラックドライバーの橋本愛喜さんは「国は女性ドライバーを増やすことで人手不足の解消を狙っているが、まるで現場をわかっていない。改善に必要なのは賃上げと労働環境の見直しだ」という――。
仕分け作業をする男性の手
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ニッポンの物流が抱える「2024年問題」

今年に入って、テレビやネットで「2024年問題」という言葉を聞くようになったと思う人も多いだろう。

「2024年問題」は、2024年4月から運送事業に携わるトラックドライバーに対して適用される「働き方改革」、つまり「労働時間の削減」によって起きる様々な問題を指す。

なかでも世間で騒がれているのが「荷物が運べなくなる」ことだ。

トラックドライバーの人手不足はかなり前から慢性的に続いているが、2024年から残業(時間外労働)が年960時間までに制限されるため、今まで運べていた荷物が運べなくなる恐れがある。

そのため、これまで以上に「人材確保」が現場では必要不可欠になるのだ。

そんななか、国や有識者、運送業界もあの手この手でその策を打っているのだが、言うまでもなく、「数打てばいい」ってもんじゃない。

現場を知らない人たちから毎度くり出される愚案に、現場のドライバーたちや運送企業から直接話を聞いている筆者は、「違うそうじゃない」を言い続けている毎日を送っているのだが、その折、産経新聞からこんな記事が配信されていた。

迫る物流2024年問題 解決導く救世主は「トラガール」』(2023年4月11日)

詳細は後述するが、トラガールとは、国土交通省のウェブサイトなどで使用されている、女性トラックドライバーの“愛称”とやらで、同省は人手不足解消の一手として「トラガール促進プロジェクト」なるものを立ち上げている。

が、強く否定しておくが、「トラガール」は24年問題の救世主では絶対にない。

いや、救世主になどしてはいけないのだ。

自衛隊の女性率よりも低い女性ドライバー

内閣府の「男女共同参画白書 令和4年版」によると、令和3年度における女性の就業者は約3002万人、男性は約3711万人で、女性の割合はおよそ44.7%。

一方、同年度の女性トラックドライバーの数は男性が約82万人で女性はわずか3万人。割合で言えばたった3%だ(全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業-現状と課題2022」p.16)。