ある日、男性ばかりの会合で2024年問題が話されていた時にも、こんな声が聞こえてきたことがある。

「トラガールを増やしていきたい」「トラガールを見ると元気になる」

その後、同じメンバーと国交省の話になった時、筆者が「ああ、あの官僚ボーイたちですか」と言ったところ、水を打ったように周囲が静まり返った。

「またまた大人をからかって」と笑いながら場を和ませようとする人に、無論悪気はない。

が、筆者は最後まで、なぜ大人の女性ドライバーは「トラガール」でよくて、なぜ男性官僚が「官僚ボーイ」ではだめなのか、理解することはできなかった。

なぜ女性トラックドライバーが増えないのか

女性がトラックドライバーとして働くのは体力・筋力的なハンデがあるからだけではない。

何よりも女性が働く環境が整っていないからだ。

中でも深刻なのが「トイレ」である。

トラックドライバーのマナー問題で毎度指摘されるものに「黄金のペットボトル」がある。

トイレに行けない時の緊急措置として、トラックドライバーは車内のペットボトルなどに用を足すことがある。

その背景にはやはりトイレが少ない、トイレやコンビニなどがあっても、車体の大きいトラックは、駐車する場所がなく立ち寄れない、という根本的な原因がある。

生理現象であるため、ペットボトルに用を足すこと自体は致し方ないことではある(ペットボトルに用を足すのと、それを外に投げ捨てることは全く別問題である)。

が、当然ながらそれは「男性」にしか成し得ない策だ。正直、女性からすると、ペットボトルで用が足せるだけでもうらやましい。

膀胱炎は、トイレ問題をかかえるトラックドライバーの職業病とも言われているが、現場を取材すると、男性以上に女性ドライバーから悩みを聞くことが多い。

避けられない生理

そして女性には、排泄以外にも「定期的にトイレ行かねばならない事情」がある。

生理だ。

現役時代、筆者がトラックで高速道路に乗っていた時、大渋滞に巻き込まれた。

生理2日目。量も痛みもひどい体質で、2日目の時は昼間から夜用のナプキンをする。ただ、生理痛がひどくてもなかなか薬は飲めない。眠くなるからだ。

納品先に到着したのは、指定された時間ギリギリ。無論ナプキンを変える時間もない。

トラックを工場に入庫させ、運転席から降りるとき、嫌な予感しかしなかった自分の目は、自然と座布団に向く。汚れていた。

座布団が汚れているということは、当然作業服のズボンも汚れていることになる。

「こういう時」のために、女性はそれぞれ様々な対策をもっているのだが、筆者は毎度黒いカーディガンを携帯していた。

それをサッと腰に巻き、荷台付近で待つ得意先に挨拶して、荷台に乗り込む。ヒラヒラしたものが現場にあることは安全管理上ご法度なのだが、背に腹は代えられない。

米が入った440袋。1つ30kg。
1つ30kgの米が入った袋。積んだり、降ろしたりするだけでも重労働になる。(ドライバー提供)