「アメリカはまだ本気を出していない」

2009年の第2回は、アメリカ側は当初、スコット・カズミア、ジョン・ラッキーなどのエース級投手も参加表明していたが、所属球団の承認が下りなかった。デレク・ジーターやチッパー・ジョーンズなど野手のスター選手は出場したものの、最終的なロースター(選手名簿)は、代表トップチームとしては寂しい顔ぶれになった。

アメリカは準決勝まで進んだものの日本に4-9で敗れる。

日本はこの大会もレッドソックスの松坂大輔、マリナーズのイチローにNPBのトップ選手を加えた精鋭で戦い、決勝で韓国を破り連覇を果たす。

この2回の大会で、日本は強豪国としての評価を高めたが「アメリカが本気を出していない中での連覇だ」という評価もあったのは否めない。WBCは、アメリカ側が主催する大会にも拘らず、アメリカの盛り上がりはいまひとつで、日本や韓国、台湾などアジア圏で盛り上がる大会になっていった。

2013年、2017年のWBCでは、日本代表には青木宣親以外のメジャーリーガーは参加せず。

MLB球団は依然としてトップクラスの投手の参加を認めなかったが、アメリカや、ドミニカ共和国、プエルトリコなどMLBに選手を輩出している国は、先発投手ほど縛りが厳しくない救援投手陣に一線級を並べて、かなりの本気度で試合に臨むようになった。

このために日本は、メジャーの一線級の救援投手の「動く速球」を攻めあぐみ、2大会共に4強で終わった。

なぜ今大会アメリカは本気を出したのか

6年ぶりに行われた今大会では、MLB球団側はやや軟化した印象がある。長引くコロナ禍で、観客動員が激減する中、MLBは新たな市場を開拓する必要が生じた。WBCは重要なコンテンツになり得ると言う見方が出てきたのだ。

ダルビッシュ有や大谷翔平などMLBのエース級の投手が参加できたのもそのためだ。他にもドミニカ共和国には昨年のサイヤング賞投手のサンディ・アルカンタラ(マーリンズ)が参加するなど、各チームともに先発陣が充実した。

また、大会前にMLB最大のスターであるエンゼルスのマイク・トラウトがいち早く参加を表明。トラウトには主催者側からの強い働きかけがあったと言われる。

これに呼応する形でカーディナルスのポール・ゴールドシュミット、ドジャースのムーキー・ベッツとMVPを受賞した大物選手が参加した。

MLBのスーパースター、エンゼルスのマイク・トラウト。WBC(写真=CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

アメリカの投手陣に関しては、今大会も一線級の先発投手はあまり出ていない。ドジャースの大エースであるクレイトン・カーショウは参加を表明したが、保険会社から認可が下りず断念している。しかし救援陣は、今のMLBを代表する一線級が揃っていた。