起こり得る複数の未来を想像する

3.未来想像力

三つ目は、未来想像力です。これから起こることを予想したり、起こり得る事態をいろいろ想定したりする時に使う想像力です。

次に起こり得る事態を想像しようとしない人と想像する人、一つの事態しか想像しない人とA、B、Cと何パターンも想像できる人とでは、どちらの人の方がうまく対応できるかは言うまでもありません。

齋藤孝『もっと想像力を使いなさい』(扶桑社新書)

未来に起こり得ることを、これも起こり得る、あれも起こり得ると、未来A、未来B、未来C、さらには未来Dと想定していれば、未来Dが起こっても落ち着いて迅速に対応できるでしょう。

また単に数だけではなく、どれだけリアリティをもって想像できるかも重要です。言葉や概念だけではなく、絵としてイメージできた方がより具体的ですし、さらに、この事態は今後こうなっていくのではないかと、ストーリーを動画として頭の中で展開できるとリアリティはより増します。

よく、「まさかと思った」とか「想定外でした」という釈明の言葉を聞きますが、文字通り「想像できていなかった」ということです。勢いだけで物事を進めていると、視野が近視眼的になり、未来に対する想像力が働きません。そうすると、いざ問題が起こった時には「まさか」と想定外の事態に陥り、追い込まれてしまいます。

想像力の土台は「経験」になる

犯罪をしてしまう人の中には、やってはいけないと分かっていても、つい、思わずやってしまって、後で後悔している人もいます。彼らは犯罪行為を行うことにより得られる報酬や目的の達成の方にばかり目が行き、逮捕されるかもしれない、刑務所に入れられるかもしれない、今ある地位や名誉、家族や友人、生活を一切失うかもしれないというデメリットやリスクをリアルに想像できていない可能性があります。

以上、想像力をその働きによって大きく三つに整理してみました。想像力を一つの力として捉えるよりも、このように分けて捉えた方が、意識して使いやすくなります。そして、想像力の土台は「経験」になります。

私はテニスのコーチをしていましたが、ボールを打つショットについて、フォアハンド、バックハンド、ボレー、サーブなど、用途や目的を明確にして練習します。それと同じです。「対人想像力」「クリエイティブ想像力」「未来想像力」と、用途と目的を明確にすることによって、意識的に想像力を活用できるようになるでしょう。

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