「テレビがつまらなくなった」というのは本当なのか。明治大学の齋藤孝教授は「差別や偏見を生まないよう多様な視聴者に配慮した結果、テレビの表現方法が変わっている。こうした配慮はテレビ業界の中だけの話ではない」という――。
※本稿は、齋藤孝『もっと想像力を使いなさい』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
「テレビがつまらなくなった」は本当か
「テレビがつまらなくなった」と、近年よく言われます。本当につまらなくなっているかどうかは分かりませんが、昔よりは多様な視聴者に配慮した番組作りがなされていることは間違いありません。この内容で傷つく人がいるのではないか、差別や偏見を助長しているのではないか、と制作に携わる人々はみんなとても気を配っています。
現代は、特に公の場では言ってはいけないことがとても増えました。しかし、それを「面倒くさい風潮だ」と思う人は、ある時うっかり失言してしまったり、ハラスメントをしてしまったりするかもしれません。
テレビ局の人と、「5年前だったらコメンテーターのこういう発言は許されたけど、今はもう許されないですよね」という話をよくしますが、世間の目というものは半年くらいで変わると言います。現代では、それくらいの社会的な感覚を持っていないと、世の中の流れから取り残されてしまいます。
コメントに「おてんば」「女だてらに」は適切なのか
私もテレビ番組にコメンテーターとして出演する時などは、
「では、“おてんば”という表現は問題ないですか?」
「じゃあ、“女だてらに”はどうでしょう?」
などと事前の打ち合わせでは表現一つにも気を配りながら、本番でコメントしています。
昭和や平成初期のドラマや映画を放送する場合に、「不適切な表現があります」と「但し書き」が付いていることがあります。それは常識が変わったということの証明です。