選択肢になりたい
――山口百恵が凄いのは、今だに関係者を潤すということです。つい最近も関連書が出ましたし、特製のCDや写真集もいまだに出る。単にビジネスの話というだけではなく、70年代といえば山口百恵に触れざるをえないくらいの存在感がある。シシド・カフカは、そういうレベルの社会現象になりたいですか。
シシド 社会現象! 考えたこともなかったですけれど……。
――ここまで伺ってきて、シシドさんが考えていることは、「何かゴールを設定して、そこに向かって行く」という戦略とは違うということは感じています。日々「精進」していくことによって、結果として先にゴールがある、という考え方なのかな、と。
シシド そう。そうですね。
――ただ、社会現象のレベルまで行くと、人はその歌を忘れない。歌が届くとはそういうことなのかな、と。そこまで行ってみたいと思いますか。
シシド ちょっと、かたちが違うかな……。阿木燿子さんがいて、宇崎竜童さんがいて、山口百恵さんがいてというトライアングルとは、わたしがつくっているものの感 覚が少し違うから。社会現象かあ……。なってみたいかな、どうかな(笑)? 生活はふつうにしたいですけれど……。でも、なんだろう、いい意味で影響が出るなら、いいかな(笑)。
――シシドさんが登場したことで、たとえば学校のブラスバンド部でドラムを叩いている女の子がいたとすれば、シシドさんは、その子にとって影響を与えるアイコンになると思うのですが。
シシド 型にはまらない子たちは、これから絶対出てくると思います。でも、わたしはたぶんそこで「思うようにやれば?」って言うんですよ。わたし自身はビジョンがないぶん、その場その場の選択で、やりたいように、思うようにやると思うんです。自分のスタイルが、「この人、なんかもう、ほんとに思うようにやってんなあ。なんだ、それって“あり”なんだ」という聴く人のひとつの選択肢としてあればいいかなと。そういうやり方を提示できたらいいなと思っています。