<柴田の問題意識>
「今やっている仕事が好きだ。」と言えますか?
誰かから言われたことをやってサラリーをもらう「サラリーマン」。悪くありませんが、一度の人生、自分で考え、自分で実行、自分で責任をとる「ビジネスマン」の方が楽しいんじゃないでしょうか。好きなことが仕事だと、疲労しても疲弊しません。
自分が好きなことを仕事というカタチにしているヒトたちは魅力的です。そんな人たちに会いたいという想いからこの企画が立ち上がりました。
第一弾は「ビストロパパ」パパ料理研究家の第一人者の滝村雅晴さんです。滝村さんは私がデジタルハリウッド株式会社の社長を務めていたときの広報責任者。あるとき、滝村さんから「独立したい、パパ料理研究家になりたい」と言われ、その時から彼の応援団の一人です。
滝村雅晴(たきむら・まさはる)●パパ料理研究家、ビストロパパ代表取締役、「パパごはんの日」プロジェクト代表・発起人
1970年京都府生まれ。93年人材採用会社にて主に新卒採用業務ののち、95年デジタルハリウッド株式会社の創立時に入社。スタートアップに関わる。2009年4月株式会社ビストロパパを立ち上げ、パパ料理研究家として活動。著書に「ママと子どもに作ってあげたい パパごはん」(マガジンハウス)などがある。
柴田励司(しばた・れいじ)●インディゴ・ブルー代表取締役社長
1962年、東京都生まれ。85年上智大学文学部卒業後、京王プラザホテル入社。在蘭日本大使館、京王プラザホテル人事部を経て、世界最大の人事コンサルティング会社の日本法人である現マーサージャパン入社。2000年日本法人社長就任。その後、キャドセンター社長、デジタルハリウッド社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任して現職。
きっかけは子どもの誕生
――まずは、滝村さんの代名詞の「ビストロパパ」について、これって会社名なんですね。
はい。いつものごはんをパパの手で作る世の中づくりをしたいと思っています。ビストロパパはそれに向けた文化創造の会社です。父親がつくる家庭料理を「パパ料理」と定義づけて新しいカテゴリーを生み出しました。会社の主な事業としては4つの柱がありまして、コンテンツ事業、セミナー事業、物販事業、広報PR事業をやっています。
――「いつものごはんをパパが作る。」ママも働いていることが当たり前になりつつある中、とてもいいフレーズだと思います。このフレーズ、いつ頃から考えていたのでしょうか。ワークライフバランスやダイバーシティーともつながりますか。
起業のきっかけって、まったくその世界ではなかったところから急に気がついたりみつけたりということが結構あると思うんですが、僕も同じで、僕の料理経験は極めて平凡。
一人暮らしのときにチャーハンをつくるとか誰もがやる程度で、料理がとくに趣味ということもありませんでした。料理をしない人が料理研究家になったっていうのは、僕が日本で初めてなんじゃないかと思います。
実をいうとワークライフバランスへの関心も特にありませんでした。これから詳しくお話しますが、僕は新しいクリエイターを育成するデジタルハリウッドがベンチャーで立ち上がったときに参画したのですが、その頃はとにかく忙しかったし、すべてが目新しく先頭を走っている気分でとっても楽しかった。やらされている感もなかったのでワークとライフを分けて考えるようなこともしなかったのです。
転機は長女が8年前に生まれたことです。ちなみに結婚が27歳、子供が生まれたのは33歳のときです。子供ができたことで、みなさんそうだと思うのですが、それまでのように気軽に外食ができなくなりました。夫婦ともに食べることが大好きだったので、それなら自分達でつくってみようかということになりました。
――その時、なぜママではなくパパが登板したのですか。
妻のツワリがすごくて料理が無理だったのです。そんなときに「このレシピいいですよ」とレシピ本を紹介してくれた後輩がいまして、そこで生まれて初めてレシピに書いてあるものを買い揃えて料理を作るという行為をしました。
そうしたら自分でつくったのにいつもの僕の味ではない料理ができた! そうか、世の中の料理にはすべて設計図があるんだ。その通りにやれば素人の僕でも美味しいものがつくれるということを知りました。
レシピに倣ってつくるというのはできるまで味がわからないという楽しみもあって、こうやって自分で作れば我が家をレストランにできると楽しくなって、ここから料理へのスイッチが入りました。