シシド・カフカは人形ですか?
――人は1人ではシシド・カフカにはならない。シシドさんのプロジェクトチームへの興味があります。具体的に伺いましょう。わたしが取材したいと思った直接のきっかけは、4月にシシドさんが山口百恵の「ロックンロール・ウィドウ」をカヴァーしてYouTubeで配信していたことです。これはどなたのアイデアですか?
シシド 山口百恵をカバーしようと言い出したのは、レコード会社のディレクターの方です。
――それはその方が事前に、シシドさんが、山口百恵が好きだということをご存じだったから?
シシド そうですね。山口百恵というキーワードを、皆さんすごく面白がってくださるんですよ。だったらそこをちゃんと出そうじゃないかと。
――それを YouTube で配信。これはどなたのアイデアですか?
シシド それも同じ方ですね。
――こういうアイデアがディレクターさんから出てくる。それを聞いたときのシシドさんの反応は? そこで「ノー」とも言えるんですか?
シシド 言えると思います。わたしはそのときは「楽しそう!」と言ってすぐ食いついたんで(笑)あれですけれど。ちゃんと自分の意見を言える環境は、つくって戴いています。
――それはひじょうに大事なことなので、重ねてお伺いします。今の音楽ビジネスを考えたときに、プロデューサの名前、たとえば秋元康さん、中田ヤスタカさん、いしわたり淳治さん……プロデューサーの名前がある種の売りになっている。では、実際に唄っている人は人形なのか、という興味です。
シシド 「じゃあこれをやりましょう」というアイデアを戴いたとします。そこで嫌なことがあったら、わたし、最初に全部言うんです。「ここが嫌です、あれが嫌です。わたし、これやりたくありません。こういうことが起こるんじゃないですか。こういう過去があるので、こういうことやりたくないです」――全部最初に言うようにしているんです。それを全部聞いて、ちゃんと考えてくださる皆さんなので、そのあとに出た結果には従うようにしています。
自分が思っている自分や「こうありたい」という気持ちって、外から見られている自分と、どうしてもリンクしないじゃないですか。プロデューサー陣の皆さんはそれを冷静に見てくださっていると思いますし、どうやったらうまくいくのかをちゃんと考えてくださっている人たちなので、その決定は信じています。わたしはいちばん最初に意見を全部言って、それ以降は、従う。過去にも何度も、やりたくなかったことをやってみて「ほら、良かったじゃないか」っていうことが何度もあったんですよ。
――それは、たとえばどんなことだったりしますか。
シシド 唄い方ひとつ、アクションひとつ。「こういう動き、したくないんですよね」とわたしが言うのを、ディレクター陣が「1回ちょっとやってみようよ」というのでやってみて、ビデオで見てみたら、「あっ、かっこいい!」と気づいたりとか、そういうちっちゃいことの積み重ねなんですけれど。
――たとえば、この取材を受ける、受けないの判断にも、シシドさんは参加可能なんですか?
シシド それは、相談され……ないときもありますね(笑)。「これ決まったよ」みたいな。でもたぶん、プロデューサー陣が悩んでいるときは、必ずわたしのところに話が来ますね。「ちょっと悩んでるんだよね、どう思う?」っていうのは聞いてくださいますね。