子供の入院における保護者の付き添い実態調査

以前、制度自体を改める動きもありました。2021年6月、衆議院厚生労働委員会で、当時国会議員だった津村啓介氏が田村憲久厚生労働大臣(同じく当時)に対して質疑を行ったのです(※1)。そこで、事実上、子供が入院する際には保護者が24時間付き添いを求められている現状と問題点を指摘し、国として初めて実態調査を行うことになりました。

この調査は子供の入院に付き添う保護者3000人にアンケート用紙を渡し、退院時に提出してもらうというものでしたが、小学生以下の子供に限ると、回答はたった27件(0.9%)。実態の把握ができなかったため、なんの対応策にも解決策にもつながりませんでした。子供の付き添い入院中は忙しく、過酷な入院生活が終わって疲れ果てて慌ただしく退院する際に、主旨のよくわからないアンケート用紙に適切に回答し提出できる人は少なかったのでしょう。事前に保護者へ目的を説明し、入院中や退院後にスマホで入力できたら回答率は上がったはずです。

その後、2022年11月に加藤勝信厚労大臣が、改めて付き添い家族への事前説明を行い周知するよう病院に依頼すると述べたようですが、実際の再調査や解決策に関しては言及していません。厚生労働省に不満が届かなければ、問題は存在しないのと同じです。

※1 47NEWS「『心を病む』過酷な子どもの付き添い入院、親の声はなぜ国に届かないのか 厚労省の実態調査は回答率わずか1%で終了?支援いまだ進まず

写真=iStock.com/thekopmylife
※写真はイメージです

それぞれが厚労省や議員に意見を伝えよう

子供の付き添い入院の改善要望を上げ、厚労省を動かすにはどうしたらよいでしょうか。それには、まず実態を知ってもらわなくてはいけません。

付き添い入院についての再調査が行われるためには、政治家または厚生労働大臣に質疑を行ってもらったり、厚労省に直接伝えたりする方法がいいのではないでしょうか。例えば陳情する、オンライン署名サイトで署名活動を行う、SNSやメールで厚労省や国会議員に伝えるのがいいのではと考えます。SNSはこういう時に役に立ってくれるでしょう。今いる子供を大切にすることも少子化対策です。政府は「異次元の少子化対策」をするとのことなので、私たちも要望を伝えていきましょう。

子育て中でも、わが子が入院するという経験をしたことがない人のほうが圧倒的に多いと思います。もちろん、入院が必要になるような大きな病気やけがをせずに成長してくれたら何よりです。でも、どの子が、いつ入院することになるかはわかりません。だから、誰しも人ごとではないのです。ぜひこの問題を知っておいていただけたらと思います。

最後に「つきそい応援団」というサイトがあり、入院制度・病院の仕組みやちょっとした工夫などを知ることができます。子供の入院に関しては、事前に情報を得ることが難しいので、ありがたいですね。ぜひ一度見てみてください。

関連記事
「こんな医者にかかってはいけない」現役小児科医が教える"ダメな医師"を見抜く簡単な質問
幼稚園のお昼寝中、私の下着の中に男児の手が…「子ども同士の性被害」の耳をふさぎたくなる実態
「30秒で診察してドサッと薬を出す医者」と「説明が長くて薬が少ない医者」、本当にいい医者はどちらか?
9年も田舎の病院は耐えられない…入りやすく"学費0円"の医学部地域枠の義務を放棄する若手医師の言い分
だから日本人は体調不良でも休みにくい…宮崎県知事の「コロナ感染隠蔽工作」に現役医師が憤るワケ