部署が変わっても、立場が変わっても支えてくれた

――具体的にはどんな人が村井さんを助けてくれたのですか。

【村井】例えば新人のとき担当していた従業員30人足らずの小さな会社があって、そこの社長さんは「7年後に株式を上場したい」と言っていました。荒唐無稽な夢のような話だとも思ったのですが、私も「ぜひやりましょう」と微力を尽くしました。忘年会の小さな宴会場にリクルートの総務から借りたレーザー光線の装置を持ち込んで「7年後上場」なんて壁に写したりして。

その通り7年近くの歳月を経たのですが、その社長さんはちゃんと会社を上場させました。私も当然部署は変わっていました。その頃リクルートはグループ会社の未公開株を配って、それが賄賂と指摘され、社会的に袋叩きにあっていました。でもその社長は自分の会社が上場する前に「村井さん、縁がある方には未公開株を保有してもらいたいものなんですよ」と笑ってくれました。私がJリーグのチェアマンになった後、社長は「故郷のJクラブの後援会になろうと思う」と言ってくれました。

新人の頃、お付き合いしていた時、将来、こんなふうに支えてもらえるなんて思いもしませんでした。そんな先のことを計算する必要はないし、誰が見ていてくれるかなんて分かりません。でも、目の前の人を偉くするために一生懸命に頑張っていると、きっと誰かが見てくれているものです。

こちらからご縁は切らない

――何十年という単位で人間関係を続けるのは簡単ではありませんね。

【村井】それは心がけ次第かもしれません。こちらからご縁は切らない。 空海の『十住心論』の中に「人に裏切られた、騙されたというが、それはお前に見る目がなかったからだ。人が自分の元から去っていったというが、関係を切ったのはお前のほうだ。世の中で起きるすべてのことは、数珠に映った自分の行いだ」というくだりがあります。「仕事」の定義は人に仕えること。人のために一生懸命生きることです。

人のために一生懸命生きていて、時間がたつと、知らないうちに誰かが自分を助けてくれる。その人との関係性を切るのは結局、自分であって、相手から切られるものではないのだと思います。

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