PK戦の結果は「サッカーの神様の激励」
――12月6日、サッカー日本代表がW杯ベスト8という新しい景色に挑みました。結果はPK戦での惜敗でしたが、多くの人が期待を持ってクロアチア戦を応援しました。
【村井】私は「期待する」ってなんだろう、と考えることがあります。人材の仕事に長く携わってきた私は、「誰かの成長を信じて、期間を保って待つ」のが「期待」だと考えます。多くの場合、人は待ちません。「今」だけを見て、ダメだと判断してしまう。しかし時間軸で考えれば、結論は変わってくるかもしれません。
――1993年「ドーハの悲劇」で日本が初のW杯出場を逃した時、「日本がW杯でドイツ、スペインに勝つ」日が来ると信じた人はほとんどいなかったでしょう。ベスト8はなりませんでしたが、Jリーグ発足から30年の時を経て、日本代表は新しい景色を私たちに見せてくれました。
【村井】PK戦の結果は、次世代に期待するサッカーの神様の激励のメッセージだと受け止めています。
Jリーグには毎年100人を超える若者が入会してきます。彼らはそれぞれのJクラブと契約した個人事業主ですから、入社ではなく入会なんですね。入会式は2月1日で、1年目の2014年はチェアマンに就任したのが1月31日でしたからドタバタで、チェアマン講話をしたのは2015年の入会式が最初でした。
10年前に入会した103人は10年後どうなったか
【村井】プロの選手も監督も経験していない自分が、これからプロとして羽ばたく彼らに何を話せば良いものか。Jリーグのスタッフの松沢緑さんとも相談して、講話の直前に思いついたのが「5年後の自分への手紙」でした。
――選手に自分宛の手紙を書かせたわけですね。
【村井】場所は静岡県のつま恋にある研修センターだったので、宿泊施設にある便箋をかき集めて何とか人数分揃えました。
それで、まずは現実を知ってもらうために、あるデータを紹介しました。松沢さんに頼んで「10年前の2004年に入会した103人がその後10年間で何試合に出場できたか」というデータを集めてもらいました。Jリーグの試合数はJ1の場合で年間約40試合。10年で400試合の出場機会がおよその上限であることになります。そこで何試合出られたか。