歴史的勝利で活気づく「にわかファン」

「初戦ドイツに勝って、みなさんが勝手に鬼の期待をしていただけ、僕はがっかりしていない」

サッカー日本代表のコスタリカ惜敗後、ABEMAで解説をしていた元日本代表FW本田圭佑氏がそのように語ったことを受けて、ネットでは「にわかファン」の問題が注目を集めている。

これまでの大会でもたびたび指摘されてきたが、日本ではワールドカップの本戦が始まった途端、普段はまったくサッカー場にも行かず、テレビ観戦もしていない人々が「あれ? そんなキャラだったっけ?」と周囲がドン引きするほど熱烈なサポーターに豹変ひょうへんするパターンが多い。

ビール片手に「打てっ! なんでそこで打たねえんだ、あーあ、使えねえな、こいつは!」などと絶叫をして、勝手に鬼の期待をかけて、勢いあまって渋谷でハメを外して大騒ぎをしたりするのだ。

1次リーグ初戦でドイツに逆転勝ちし、歓喜する若者=2022年11月24日未明、東京都渋谷区
写真=時事通信フォト
1次リーグ初戦でドイツに逆転勝ちし、歓喜する若者=2022年11月24日未明、東京都渋谷区

また、ベテランのサッカーファンによれば、そのような「にわかファン」にかぎって、試合で負けると「戦犯探し」に熱中しがちだという。今回も一部の選手が「お前のせいだ」「もう試合に出るな」など心ない誹謗ひぼう中傷を受けており、Twitterでは「戦犯探し」がトレンド入りをしたが、それもドイツ戦の歴史的勝利で「にわかファン」が急増したからかもしれない。

「ナショナリズムが刺激されるから」は本当か

さて、そこで気になるのはなぜ日本ではワールドカップのたびに、雨後のタケノコのように「にわかファン」が湧いて出てくるのか。

よく言われるのは、「ナショナリズム」の影響だ。今回も試合結果を受けて、暴動が起きている国があることからもわかるように、サッカーワールドカップにはナショナリズムを刺激して、一部の群衆を攻撃的にする「効果」があることがわかっている。実際、過去にはW杯で対立した国同士が、本物の戦争へ発展したケースもあったほどだ。

つまり、アジア予選リーグではシラけているのに本戦に出られることになると急に「にわかファン」が増えるのは、日本人が強烈にナショナリズムを刺激されているからだというのだ。

ただ、個人的にはこの説はあまりピンとこない。「にわかファン」の中には確かに渋谷で大騒ぎをするような人たちもいるが、他国のように暴徒化するわけではない。ナショナリズムはヘイトクライムにつながりがちだが、ロシアのウクライナ侵攻時、在日ロシア人に嫌がらせをしたようなことを、ドイツ人やスペイン人に対してやったなんて話も聞かない。

では、ナショナリズムの影響ではないとしたら、なにが人々を「にわかファン」に駆り立てているのか。筆者は日本人の「強すぎる承認欲求」が影響しているのではないかと考えている。