ワールドカップは自信を獲得する最高の機会

つまり、日本人というのは「個人」でいると自己肯定感も低くて、「どうせオレなんて」と自信なさげなのだが、「自分は日本人だ」と自覚をすると途端に、諸外国並のナショナリズムが発動をする、という二面性を持っているのだ。

筆者はこのユニークな国民性が「にわかファン」を大量に生み出すメカニズムではないかと思っている。

多くの日本人は低い自己肯定感を抱えながら、毎日必死に生きている。今の自分にも満足できない。自分は何も長所がないつまらない人間だと卑下している人もいる。言いたいことが言えずに、腹の中に不満をグッと抑え込んでいる人もいる。

では、そんなストレスフルな毎日を送る「自分に自信のない日本人」の耳に、サッカー日本代表がワールドカップに出場するという話が飛び込んだら、一体どんなアクションをとるか想像していただきたい。

かなり多くの人が「にわかファン」となって熱烈に応援するのではないか。全世界が注目をするひのき舞台で、日本人が活躍して称賛されるかもしれない。その瞬間を目撃して、仲間や家族と大喜びするというのは、「自分は誇り高い日本人の一員だ」と自覚できる最高の機会だからだ。

見方を変えれば、「自信のない日本人」にとって、ワールドカップで「にわかファン」になるというのは一種の「自信獲得のための儀式」のようなものなのだ。

オリンピックでも「にわかファン」は急増する

「侮辱するな!」と怒りに震える「にわかファン」の方もいらっしゃるだろうが、決して「にわかファン」を批判や揶揄やゆしているわけではない。日本人の中には、「スポーツ」を純粋に楽しめず、「自国民の優秀さ」と重ねてしまう人がかなりいる、と指摘したいのだ。実際にこれまでの「国家」を背負って戦うスポーツイベントを振り返ってみてもそうだった。

その代表が、オリンピックである。よく言われることだが、オリンピックを日本のように国中で熱狂しているのは、中国、北朝鮮、ロシア、東南アジアの一部などだけで、欧米やその他の国では「なんだかよく知らないアマチュア選手が頑張っているな」くらいのノリで観戦しているような国が多い。

暗闇で照らされている五輪マーク(モントリオール)
写真=iStock.com/BalkansCat
※写真はイメージです

しかし、日本ではそれまで体操や柔道の試合を観戦したことがない人たちが、オリンピックになるとテレビにかじりついて「感動をありがとう!」とか絶叫をする。ワールドカップ以上に「にわかファン」が急増するという現実があるのだ。