W杯カタール大会で、日本は優勝経験国のドイツとスペインを下しベスト16で大会を終えた。日本サッカー躍進の原動力となったJリーグは、2021年度までの8年で営業収益を2倍以上に増やしている。チェアマンを4期8年務めた村井満さんが臨んだ「DAZNとの2100億円契約」について、ジャーナリストの大西康之さんが聞く――。(第11回)

なぜDAZNと契約することになったのか

――村井さんがチェアマンの時代にJリーグの収益構造を最も大きく変えたのは、ネット配信の「DAZN」を運営する英国パフォーム社との契約でした。2017年からの10年間で2100億円という超大型の契約は世界の度肝を抜きました。金額の大きさだけでなく「テレビからネットへ」という乗り換えも驚きでした。

【村井】せっかくなので今日はDAZNさんと契約に至ったひとつの縁についてお話ししましょう。2014年3月にチェアマンに就任した私は、6月に開かれたW杯ブラジル大会を現地で観戦しました。日本は初戦のコートジボワール戦、MF本田圭佑選手のゴールで先制しますが、後半にエース、ドログバを投入してきた相手にゲームをひっくり返されて敗戦。次のギリシア戦は0対0の引き分け。最終のコロンビア戦は岡崎慎司のゴールで1点を返したものの1対4で敗れ、一勝もできないまま終わりました。

ブラジルから40時間かけてミャンマーに飛んだら…

【村井】試合観戦だけではなく、コリンチャンスとかフラメンゴとかブラジルの名門クラブにも視察に行ってサッカー文化を肌で感じていたわけです。しかし、その開催国ブラジルは準決勝でドイツに1対7という屈辱的な大敗を喫するわけです。これもまた大きな衝撃でした。

【連載】「Jの金言」はこちら
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日本が敗退すると私は日本に戻らず、ブラジルから40時間かけてミャンマーに飛びました。日本とミャンマーの国交樹立60周年を記念する試合を観戦するためでした。ヤンゴンに到着すると、1人の男が私を待ち構えていました。名前をディーン・サドラーと言います。パフォーム社の幹部でした。

当時のパフォーム社は今のようなスポーツ番組のライブ配信をやっていたわけではありませんでした。2011年にサッカーニュース専門のウェブサイトのGoal.comを買収したのですが、海外サッカーしか扱っていなかったので、日本でのユーザー拡大のためにJリーグも取り上げる企画を練っていたようです。