「期待」とは時間軸で考えるべきもの

【村井】試合中の選手は、相手のフォーメーション、雨が降ってスリッピーだとか、ゴール前が凸凹だとかいうピッチの状況、仲間の調子など、さまざまな事象を「観察」します。観察した上で「今はこうしたほうがいい」と打ち手を「考え」その中から一つの戦略を「判断」し、その判断をピッチ上の仲間に「伝達」し、あるいはチーム全体を「統率」してゲームを「実践」する。

その「実践」がうまくいっているかどうかを再び「観察」して、同じサイクルを繰り返す。このサイクルを高速で回すためには数学的な思考や、地図から地形を読み取るような素材を通じて考え、議論していくことなどが必要なのです。

Jリーグでチェアマンを4期8年務めた村井満さん
撮影=奥谷仁

――一朝一夕で身に付く能力ではありませんね。

【村井】だから時間軸が必要なんです。今、スキルがないからダメ、結果が出せないからダメではなく、一定の期間を決め、成長を信じて待つ。「期待」とは時間軸で考えるべきものなのです。それはコーチと選手だけでなく、上司と部下、親と子、先生と生徒、あらゆる関係で言えることでしょう。

今回のW杯も日本はベスト16の壁を破れませんでした。でも「だからダメ」ではなく、4年という時間軸を置いて、考えられるすべての手段を講じて、選手とチームの成長を待つ。次に期待したいと思います。

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