なぜ「千葉のニコタマ」と呼ばれるようになったのか

だが、流山おおたかの森駅周辺の開発が進むにつれて、ショッピングセンターの客層が変わってきた。「流山おおたかの森」という街の付加価値が高まったことで比較的、所得の高い層が集まってきたのだ。

この数年はフードメゾンの売上高が右肩上がり。ついにヨーカドーと肩を並べようとしている。そしてFAUCHONはオープンから15年が経過した今も元気に営業している。「デパ地下の味」を楽しめるフードメゾンは、流山おおたかの森S・Cの魅力の一つになっている。ハイソ化が進む流山おおたかの森は、いつしか「千葉のニコタマ」と呼ばれるようになった。

「ニコタマ」とは世田谷区の二子玉川。高級住宅街と大型商業施設を併せ持つ東急田園都市線二子玉川駅周辺のハイソなエリアだ。

「○○銀座みたいで、なんだか気恥ずかしい」

「千葉のニコタマ」というフレーズは、地元の人間である筆者にとってなかなかしっくり来なかった。だが本物の「ニコタマ」を訪ねて駅の西口あたりを歩いてみると、なるほど「流山おおたかの森S・C」とどこか雰囲気が似ている。

「なんだろうこのデジャビュ感は」

謎は簡単に解けた。

ニコタマの中核をなす「玉川髙島屋S・C」と流山の新しい顔になった「流山おおたかの森S・C」。二つの商業施設を開発した会社が同じだったのだ。薔薇の模様の包み紙でお馴染みの老舗百貨店、髙島屋。その子会社の東神開発である。

市長が駅前再開発で最もこだわったこと

駅前の区画整理が終わり、デベロッパーの入札があったのは2003年。市長になったばかりの井崎義治は、市長室でそわそわしながら落札の結果を待っていた。

札を入れたのは東神開発、イオン、ユニーの3社。UR都市機構に再開発を委託している流山市はデベロッパーの選定には口を出せない。井崎は入札した3社に「10項目のお願い」を伝えていた。

主な「お願い」は、

・大型シネコン(複数スクリーンを持つ映画館)の設置
・大型書店の設置
・日本初または千葉県初の店舗の設置
・デパ地下(デパートの地下1階にある食品売り場)の設置
・敷地内の大規模な緑化

デベロッパーが最も渋ったのがシネコンだ。「ららぽーと柏の葉」もまた中核にシネコンを据えようとしていた。

「スクリーンの数は柏の葉プラス1でお願いしたい」

井崎は内々でそう伝えた。

ららぽーとが8スクリーンならこちらは9スクリーン。10スクリーンなら11を作れというのだ。

「そんなに作ったら共倒れになります」

尻込みするデベロッパーに井崎はハッパをかけた。

「向こうからお客を奪えばいいんですよ」