高級志向と大衆路線の商業施設が共存

そこから生まれたのが「我が家のビッグ・パントリー(食品庫)」という発想だ。子育てファミリー層向けに日常生活の必需品が揃うNSC。意識したのは「誰もが名前を知っていて、入る前に値段が分かる安心な店」を集めることだ。

大西康之『流山がすごい』(新潮新書)
大西康之『流山がすごい』(新潮新書)

物販では家電量販の「コジマ×ビックカメラ」、赤ちゃん用品の「西松屋」、ドラッグストアの「マツモトキヨシ」、100円ショップの「キャンドゥ」。飲食店は回転寿司の「銚子丸」、中華の「餃子の王将」、焼肉の「牛角食べ放題専門店」と、ファミリー層に馴染みの店が集まった。

「すべてのお店に外から出入りできる設計にして、営業時間もお店の自由。平面駐車場を増やして使い勝手をよくしました」(大野)

高級志向の流山おおたかの森S・Cと、大衆路線のコトエ。二つの大型商業施設はターゲットごとにうまく棲み分けられている。

「私達が街を作っていくんだ」

流山おおたかの森が面白いのは、市長の井崎義治が描いた「都心から一番近い森の街」というグランドデザインの上で、さまざまな企業が思い思いのアイデアを競っているところにある。

統一感、未来感という意味では、2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章が所長だった宇宙線研究所がある「柏の葉キャンパス」に軍配が上がるかもしれない。こちらは三井不動産が一手に開発した。二つの街をじっくり見た上で「流山おおたかの森」を選んだ主婦はこう言った。

「柏の葉キャンパスは最初から全てが整いすぎていて、住まわせてもらう感じがしました。空き地だらけだった流山おおたかの森は『私達が街を作っていくんだ』という雰囲気があった。それが流山おおたかの森を選んだ理由です」

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