日本で新宿と流山にしかない超巨大スクリーン

後に東神開発の担当者が井崎に言った。

「あのブリッジは本当に作って良かったです。あれのおかげで集客力が随分上がりました」

右側に見える橋が市長がこだわった空中回路
右側に見える橋が、市長がこだわった空中回路(写真=くろふね/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

シネコンはTOHOシネマズの招致に成功した。柏の葉キャンパスは松竹系のMOVIXを入れた。井崎の要望通りスクリーン数は流山おおたかの森が一つ多い。

TOHOシネマズは2020年、ここに4Kレーザー投影システムの「IMAXレーザー」を導入した。関東のTOHOシネマズでIMAXレーザーを備えているのは新宿と流山おおたかの森の2カ所である(22年8月時点)。流山のシネコンが大成功している証と言える。

建物の周りを植栽で覆い、敷地面積の30%以上を緑化した「流山おおたかの森S・C」は流山市が提唱した「グリーンチェーン(レベル2)」の認定第一号になった。

なぜ大和ハウスはマンションを建てなかったのか

「流山おおたかの森S・C ANNEX2」が開業する2カ月前の2022年4月27日、もう一つの大型複合商業施設「COTOE(コトエ)流山おおたかの森」がオープンした。大和ハウス工業が開発したNSC(近隣商圏型ショッピングセンター)だ。

大和ハウス工業は流山に大投資をしている。江戸川の河川敷にはネットショッピングの巨人、アマゾン・ドットコムも利用する総延床面積約70万m2の巨大物流施設「DPL流山プロジェクト」を展開し、約1300戸の戸建住宅と約4800戸の賃貸住宅を供給している。そこにショッピングセンターが加わった。

ショッピングセンターの建設が決まったのは2018年。つくばエクスプレスの開通から13年が経ってUR(都市再生機構)が最後のまとまった土地の公募をかけた時、入札した大和ハウス工業はこう考えた。

「飽和状態の街にこれ以上、マンションを建てるより、すでに住んでいる人たちに使ってもらう商業施設を建てる方が理にかなっている」

SC(ショッピングセンター)事業部MD企画室長の大野拓也は、一足早くこの地に進出した東神開発の「流山おおたかの森S・C」をリスペクトしていた。

「駅前の中核施設として、この街の発展を引っ張ってきたのは流山おおたかの森S・Cさん。後発の我々が彼らと同じことをやっても仕方がない」