※本稿は、大西康之『流山がすごい』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
なぜ「千葉のチベット」は人口増加が止まらないのか
千葉県のマスコットは県の地図を犬に見立てた「チーバくん」。県北西部、茨城県や埼玉県に近い流山市は、野田市とともに、チーバくんの鼻の先を構成している。道路や鉄道の開発が遅れ、かつて「千葉のチベット」と呼ばれた地域である。
「千葉のチベット」の中でもとりわけ辺鄙と言われた流山市。その流山市が変わるきっかけになったのは2005年のつくばエクスプレス(TX)開業だ。
市内に「南流山」「流山セントラルパーク」「流山おおたかの森」の3駅ができ、駅周辺で一気に土地区画整理が進んだ。TXと東武アーバンパークライン(東武野田線)がクロスする流山おおたかの森の駅前には巨大ショッピングセンターや大型のマンションが林立し、今や「千葉のニコタマ(ヤングセレブの街として有名な世田谷区二子玉川の略称)」と呼ばれている。
TX開業時に約15万人だった流山市の人口は、2021年に20万人を超え、22年には20万6000人。この10年で3万8000人増えた。
人口増は不動産の資産価値も大きく押し上げ、更地の一坪(約3.3平方メートル)単価が「流山おおたかの森駅」から10分程度で約110万円。3LDKの中古マンション(築10年程度)については同駅から5分程度で約4800万円と、ともに5年前の1.5倍に上昇した。
地元不動産会社の社長の岡村徳久は「TX沿線には都内の駅もあるが、治安などを考えて、流山が選ばれる」と解説する。
激変するお買い物環境
流山おおたかの森駅周辺のお買い物環境は今まさに劇的に進化中だ。
「流山おおたかの森S・C ANNEX2」は地上4階建てで、1階の角上生鮮市場の中に、肉の専門店「あまいけ」、野菜の専門店の「アール元気」がある。2階と3階は「ニトリ」。2フロアにまたがる巨大な売り場なので大方の家具や日用品は揃っている。4階は100均の「セリア」と衣料品リサイクルの「東京古着」。元オリンピック選手が教えてくれる子供向けの体操教室やダンス教室はオープンと同時に申し込みが殺到した。屋上はフットサル場だ。
「ANNEX2」があるのだから「ANNEX1」がある。でANNEXとは「別館」の意味だから「本館」もある。この他に「FLAPS(フラップス)」という別棟もある。
整理するとつくばエクスプレスの開通から2年後の2007年に「流山おおたかの森S・C(本館)」がオープンし、14年にANNEX、21年にFLAPS、22年にANNEX2という順番で開業している。