このように、EVが増え続ける限りリチウムイオンバッテリーの価格は上昇基調を続けることになり、結果としてBEVの価格も上昇トレンドを続けることとなるだろう。
現状でもBEVの価格はガソリン車やハイブリッド車と比べてかなり高いので、その価格差はさらに拡大することとなる。
補助金に支えられてきた販売台数の伸び
世界のBEV販売台数は現状伸びているが、その多くは中国で、BEV化を推進していた欧州ではその伸びは鈍化している。2022年1~10月のデータでは、中国のプラグイン車の販売は113%増なのに対し、ヨーロッパでは9%増にとどまっている。
2021年まで1台あたり9000ユーロ(約130万円)という巨額のBEV補助金を出していたドイツでは、2022年に補助金が6000ユーロに減額されたことも影響があるだろう。
補助金は2023年に4500ユーロ、2024年には3000ユーロに減額される予定だ。販売台数が増えてくると1台あたりの補助金の額も下げざるを得ないのだろう。
前述したとおり車両価格も上昇しているので、ユーザーのBEV購入へのハードルは高くなるばかりだ。そうなるとBEVの販売台数の伸びは大きく期待できないと考えられる。
BEVの普及は「裕福な国」の夢物語
BEV化の目的はグローバルでのCO2削減のはずだ。裕福なヨーロッパでもその普及が遅れるのであれば、それ以外の地域、たとえばアジアやアフリカで高コストのBEVが普及する見込みはほとんどないと考えるのが自然ではないか。
さらに、BEV化は、単にBEVを売ればいいというわけではなく、充電インフラの整備、発電量の増大(しかも、カーボンフリー/カーボンニュートラル発電である必要がある)といった非常にコストのかかる社会インフラの整備も必要になってくる。
リッチで環境意識も高い一部ヨーロッパ諸国や、中央集権国家である中国では達成できるかもしれないが、それはグローバルで見れば一部であって、当面の間は多くの国で化石燃料に頼らざるを得ない状況が続く、と見るほうが自然ではないか。