そこにコロナ禍が来て、コンビニには結果的に低所得層の離脱と中流層へのフォーカスが起きました。セブンの場合はデータに基づいて経営していたら低所得層が離脱したのかもしれませんし、ローソンの場合は意図的に中流層にフォーカスする品揃えをしたためそうなったのかもしれません。
いずれにしても、2022年に入りコンビニ各社のメインの顧客は生活に余裕がある中流の上の階層になってしまったわけです。そしてそうなるとチェーンには個性が必要になります。ファミマもフォロワー戦略ではだめで、ファミマらしさが求められる顧客構成に変わったということです。
個性の必要な業界、そうでない業界
そもそも世の中の小売業チェーンには個性が要らない業態と、個性が必要な業態があります。もちろんそれぞれの会社は個性を争っているのですが、消費者の側から見るとそんなことは知ったことではないという場合があるという意味です。
たとえば大型スーパーでイオンがいいかイトーヨーカドーがいいかは個性ではなく近所にあるかどうかで選ばれます。スギ薬局とサンドラッグのどちらがいいかは立地だけの差になります。大衆をターゲットにしている小売業態では品揃えに個性はそれほど必要ではありません。
しかし中流の上をターゲットにすると小売店に個性が必要になります。なぜなら中流層は「高いものを選ぶ理由」を求めているからです。
「中流の上」層に選ぶ理由を与えたい
料理店で言えば「スペシャリテに相当するものが必要だ」と言うとわかりやすいでしょうか。もちろん家に近い、職場に近いという理由でそれぞれのコンビニを利用する人が8割だとしても、それを固定するための個性があったほうがいいのです。
ファミマの場合、新社長に細見研介氏が就任して以来、スペシャリテの強化にかじ取りが動いたように見えます。それは冒頭で紹介したコンビニエンスウェアもひとつあるのですが、他にもファミマにはスペシャリテが存在します。
一番わかりやすい例は「ファミチキ」でしょう。伊藤忠の畜産部門からファミマの社長になった上田準二氏が手掛け2006年に販売開始されたファミチキは、日本ではケンタッキーフライドチキンに次ぐほどの人気商品に育ちました。これはファミマの最大の個性です。