「便所の落書き」による反政府運動
ブリッジマンの横断幕に刺激された一連の抗議は、「トイレ革命」と呼ばれる。草の根レベルの反政府運動だ。
「トイレ革命」とは奇妙な命名だが、これは反政権の意思を人知れず広めたい民衆が、トイレの壁への落書きなどを通じてメッセージを広めていることに由来する。
中国の著名ライターである方舟子氏はツイートを通じ、抗議メッセージの落書きの一部を紹介している。北京の映画アーカイブのトイレや上海の公衆トイレなど、中国各所で発生したとされる抗議行動の実例だ。
いずれもゼロコロナ強行路線の撤廃と習近平氏の退陣を求める内容となっている。壁にスプレーで大きく書かれた文からは、「独裁」「国賊」「核酸(PCRテスト)」などの文字を読み取ることができる。
落書きのほか、人目につかぬようポスターを掲示し、素早く立ち去るという手法も多用されている。米CNNは、早朝に大学構内の掲示板に近づき、反習近平のポスターを貼り付けた大学生の例を報道している。
意外にもこの例は、中国国内で発生した事例ではない。ロンドンの大学校内において、中国人留学生有志が実行したものだ。中国共産党批判のポスターは国境を越え、このように世界に拡散している。
中国からの留学生は海外生活中であっても、同国が世界に張り巡らせた監視網の管理下に置かれている。このため本国と同じく、抗議活動への熱が高い。
米メディアのヴァイスは、同様のポスターがオーストラリア、日本、カナダ、イギリスにアメリカなど、世界各国の250の大学に出現していると報じている。
共感する民衆「大それたことはできないが、小さなことなら」
「トイレ革命」の例は尽きない。ニュース専門局のフランス24によると、電車やバスの手すりなど目につきやすい箇所に、抗議メッセージを刻んだ小さなステッカーが見られるようになったという。
安価なポータブル型プリンターでメッセージ入りのステッカーを印刷し、公共の場所に残すという手法だ。実際にステッカーを制作し公共の場に貼っているという活動家は、フランス24に対し匿名で次のように語っている。
「私に大きな力はありませんが、小さな力ならあります。(ブリッジマンのように)大きな横断幕を作る勇気は出ませんが、小さなものなら作れます」
小さなステッカーを素早く貼ってその場を立ち去ることで、当局に拘束されるリスクを最小限に抑えながら、抗議の草の根活動を実行することができるのだという。