「価格が変動の大きい株や長期債などを大量保有している」のは「通貨の信用棄損を避けるため、中央銀行は価格の上下動の激しい資産を保有してはいけない」という中央銀行の鉄則を破るものだ。

私が銀行員の時は、中央銀行は価格の動きが少ない約束手形や3カ月程度の短期債しか保有しなかった。それらの鉄則や常識をことごとく破っているのが黒田日銀だ。

オーソドックスな金融論からすると、あまりに過激なことをする日銀の将来に対して、私の考える結論が過激になるのは致し方ない。

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円安が止まらない二大要因

今現在、ドル高/円安が進行しているが、マーケットは日米金利差をその理由としている。もちろん、これはドル高/円安進行の強力な理由だ。

私が「こんなに簡単なマーケットは、長いディーラー人生でも初めてだ。ドル高/円安が進む」と春先から声を大にして申し上げてきたのは、これが理由だ。

ディーラーとしての経験から、ドル/円の方向を決める二大要因は「日米金利差と日本の経常収支動向」だと思っていた。この二大要因が、同時に円安方向を向いているのは私の長いディーラー生活でも初めてだからなのだ。

「経常収支が赤字化すると長期金利高、通貨安又はその両方が起きる」というのはオーソドックスな金融論が教えてくれるところ。

日米金利差拡大はいろいろなチャネルを通じてドル高/円安を推し進める。

まず、投機筋によるドル高進行だ。低い金利の円を借りて高金利のドルに換えドル投資するキャリートレードがその1例だ。ただしマスコミや識者がしばしばキャリートレードに触れるが、実際にそれをやっているのはミセス・ワタナベがやっている(注:日本人の個人FXトレーダーのことを海外ではなぜかミセス・ワタナベと呼ぶ)FXくらいだ。

円売り・ドル買いでぼろ儲けの「投機筋」

ヘッジファンド等の日米金利差利用の勝負は、為替先物で行われる。一般の方は為替の直物と言って、今日、ドルと円を交換する(銀行の窓口で円と当日交換できるが、プロ同士は2日後)のが通常だ。

一方、輸出入やヘッジファンドが多用する先物とは、先々の日(例えば1年後)に決済(円とドルの交換)をするのだが、その時のレートを今日決めておく取引だ。理論的に日米金利差が開くとその先物のドル価は下がる。