例えば今直物が150円、1年の先物が140円だとする。それが日米金利差がさらに開くと110円へと下落する。

あなたは買いたくならないか? もっと日米金利差が開き、1年後の先物レートが80円になるなら、あなたのドル先物購入意欲は更に増すだろう。1年たって、その時点での直物レートが150円と本日と変わらなければ、1年前に約束した80円でドルを引き取り、直物市場で150円で売れば、ぼろ儲けだからだ。

このように日米金利差が開くと投機家が先物のドル買いに殺到する。(少し専門的になるのだが)ドルの先物レートは「直物の買い」と「直先の幅」の取引の合算。したがって魅力的になった先物のドル買いによって直物のドル買い圧力が生じるのだ。だからドル高。

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「マーケットが既に織り込み済み」という解説はウソである

よく「金利差が開くことはマーケットが既に織り込み済み」などとトンチンカンな解説をする人がいるが、そのような人は素人だと思った方がいい。

「上記の取引が増えるだろうからドルが上がるだろう」との先読み(=織り込む)は存在するが、上記の取引自体は、実際に日米金利差が開いた後でないと出来ないからだ。なにせそれまでは魅力的なレートが出現しないからだ。

以上のような投機家の動きだけでも充分大きな圧力だが、日米金利差が開くと実需のドル買いもドルを押し上げる。

ドルで運用する資金を円で調達しようという行為が、その一例だ。

投資の神様・バフェット氏も日本円で資金調達

以前、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが円の社債を発行した際、日本の株関係者は、「バフェット氏が今後日本株を買う証拠だ」と大喜びをしたが、私はSNSに「そんなことは無い。バフェット氏はさすが頭がいい。円で資金調達し、米国でのドル投資に使うだろう」と書いた。

日米金利差が開けば、このようなオペレーションが山ほど出てくるだろう。それが経済的に合理的だからだ。

世界で最も低い金利の円で資金を調達し、ドルに換えそのドルで投資(設備投資などを含む)をする。為替ヘッジはしない。満期になり借金を返す時に円安が進んでいれば、借りた時よりはるかに少ないドルで借金を返済できる。マイナス金利での資金調達、すなわち借金をして金利が儲かることが可能になるのだ。