新卒社員が入社して約1週間、早くも退社する新人からの退職代行依頼が業者のもとに殺到している。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「会社の事前の説明と全く異なる待遇・職場環境など辞めたほうがいケースもあるが、自重して経験を積み、どの組織・企業にもある“理不尽さ”への耐性をつければ新しい景色も見えてくる」という――。
初心者マークを手に、ほほ笑む男性
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新人研修期間に4000人超の退職者がいる

今年も4月入社の新社会人の退職が止まらない。退職代行サービス「モームリ」の発表によると、4月1日の入社式当日に2025年度新卒の退職代行依頼は5人もいた。

以降、一般的に合同研修が始まる2日8人、3日18人、4日13人、週明け7日の月曜日は42人。7日間で計90人を超えているという。

研修中に突然来なくなり、後日、本人から電話で「辞めます」と言ってくる新人がいるという話は人事担当者からよく聞く。

大卒就職者は約45万人。厚生労働省調査の1年以内の離職率約12%を考慮すると、他の退職代行会社への依頼を含めて研修期間に4000人超の退職者がいると推測される。

せっかく入社式までこぎつけたのに、なぜ早々と辞めてしまうのか。「モームリ」が公表している退職理由を確認してみると、

① ブラック系だと知らずに入った
② 入社前に聞いた労働条件のギャップ
③ 早まった微妙な退職

――の3つに分けられる。

① では以下のような企業である。

「社長が入社式の最中に新卒社員ともめて、みんなの前で怒鳴ったことに加え、廊下に出して『なめてんのか』と説教」(女性・事務関連)

「新年会参加時、先輩から『彼女と今年はもうしたの?』『ヤリまくってるんでしょう?』などの発言をされた。新年会中は終始上司が下ネタをいい、社長も女性社員にセクハラをしている」(建築/建設業・男性)

パワハラ、セクハラなど人権侵害の甚だしい企業であり、辞めて当然だろう。

② については以下のような理由がある。

「入社前に給料は26万円あると聞いていたが、入社後20万円と書かれた契約書にサインさせられた」(販売業・女性)

「入社後に休日出勤の必要があると説明を受けた。入社前はそのような説明は一切受けていなかった」(教育関連・女性)

「入社前に聞いていた出勤日数、休日日数と入社後に受けたそれらの説明の内容が違った」(製造業・女性)