就職氷河期世代には非正規雇用の人が多く、正規雇用されている人は勝ち組といえるかもしれない。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんは「正規雇用の人も年収は思うように伸びず、転職も思うようにいかない。将来の介護や年金不安を解消するには、いますぐやるべきことがある」という――。

※本稿は、永濱利廣『就職氷河期世代の経済学』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

オフィスの窓から外の街を見つめている女性の後ろ姿
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです

年齢やスキル不足で就職氷河期世代の転職は難しい

就職氷河期世代は非正規雇用の人の苦しさはもちろんですが、正規雇用の人も40代になっても年収が思うように伸びないうえに、年齢的に早期退職の対象となるなど、企業の現場でも厳しい状況に置かれている人が少なくありません。

では、こうした状況を脱するために転職をして、より条件の良い会社に就職したらどうかということですが、就職氷河期世代の転職希望者の割合は少ないという特徴があります(図表1)。就職氷河期世代の転職希望者の割合が少ない理由は、いくつか考えられます。

【図表】転職希望者割合
資料=総務省「労働力調査」 出典=永濱利廣『就職氷河期世代の経済学』(日本能率協会マネジメントセンター)
1 年齢の問題

今の時代は特に若い世代は転職によって給与が上がるケースが多いのですが、就職氷河期世代は転職しても給与が上がりにくい傾向があります。企業というのは年功序列的な給与体系のところが依然として少なくなく、年齢が高いほど人件費は高くなると考えています。そのため採用や昇給に際しては今でも年齢を考慮することが多く、どうせ採用するなら年齢の高い人よりも若い人を優先するところがあります。

結果、就職氷河期世代は能力を買われてスカウトされるとかならともかく、通常の転職活動では不利な立場に立たされやすく、転職しても条件が必ずしも良くならないという面があります。