金が余っている状態では、少し不動産価格が下がると、貸家生活の人が持ち家に切り替えようと不動産価格は再度上昇に向かうと思われる。

金が余っている限り、株や不動産の下落は限定的で、いつまでも資産効果(お金を持っている人がお金持ちになったつもりでお金を使う。それを見て株価がさらに上がるという好循環)が継続する。したがってインフレなど収まらない(注意:資産インフレが起きてもインフレが起きているとはいわれない)。

日本のバブルと同じことが、アメリカで起きている

これは資産効果で経済が狂乱した1985年から90年までの日本のバブル経済と同じだ。

違いは、バブル期の日本は、1年に30円、40円の円高が毎年進行し、円高というデフレ要因が狂乱経済というインフレ要因を相殺していたのに対し、現在の米国は(日本のバブル時に比し)微々たるドル高しか進んでおらず、デフレ要因が無いので、CPI(消費者物価指数)も上昇しているに過ぎない。

アメリカのタイムスクエアのショット。
写真=iStock.com/NeonJellyfish
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以上のように「お金がじゃぶじゃぶの状態が問題だ」と分かってきた他国の中央銀行は、遅まきながらもQT(量的引き締め)を始めたか近々開始する予定だ。

一方の日本は、QTを始められないどころかQE(量的緩和)をやめることさえできない。新発国国債と借換債計百数十兆円を超低金利で購入してくれる機関など日銀以外には存在しないからだ。

日銀が購入せざるを得ない。入札には民間金融機関が参加しているが、それは即、日銀に転売する日銀トレードが目的だ。日銀が撤退すれば、国債市場は総崩れ(=長期金利暴騰)だ。

長期金利が急騰すれば、日銀はとんでもない債務超過に陥り、政府は支払い金利急増で予算など組めなくなる。したがって日銀は未来永劫、QEを継続しなければならない。

回収され奪い合いになるドルと毎日天から降ってきて価値が希薄化していく円、どちらが強くなるかは明白だ。これが、1ドルは400円から500円とまでドル高が進行すると私が予想する理由だ。

日本のまねをして信用を失ったイギリス

ちなみにQTかQEかの問題ばかりではなく、今まで日銀がばらまいたお金の絶対量は他国中央銀行に比べて圧倒的に大きい。インフレの時限爆弾を抱えているということ。日銀のバランスシートは対GDPで260%を超えG20で最悪(経済規模に比し、お金を最もばらまいている=お金の希薄化の可能性が高い)だ。