また30年間で、GDPが3.5倍に拡大した米国では、マネタリーベースが9倍にしか増加していない。一方、日本は、ほとんどGDPが伸びていないのにマネタリーベースは、約14倍だ。経済が拡大にしていないのにお金をバラマキ続けたということだ。

お金の価値の希薄化が今後大きく進んでもおかしくない。このお金の大量発行は日銀が平時から財政ファイナンスを行っていたせいだ。基本、コロナ対策で財政ファイナンスに手を出してしまった他国政府とはお金のバラマキの規模が格段に違う。

他国は、日銀を「炭鉱のカナリア」として見ていたのだと私は思う。「あれほど財政ファイナンスを行っている日銀がまだこけていないのだから、多少財政ファイナンスをやっても大丈夫だろう」とのつもりだったのが、市場に足を掬われてしまったのが今回の英国だと思っている。

ドル/円は天文学的な数字になる

日本ではほとんど話題にならないが、米国では1980年のサタデーナイトスペシャルに言及する人がローレンス・サマーズ元財務長官をはじめ少なからずいる。

サタデーナイトスペシャルとは「悪性インフレは、過剰なお金の存在のせい」と看破した当時のボルカーFRB議長が、政策の目標を金利からお金の流通量に変えた事件。金利上昇懸念や景気悪化懸念を一顧だにせず、強烈なQT(量的引き締め)を行ったのだ。それで長期金利(10年国債金利)は20%、1日の金利は24%に跳ね上がった。

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今は、(日本に比べればはるかに小規模とはいえ)財政ファイナンスでバラまかれたお金の量は当時より格段に多い。したがって私はサタデーナイトスペシャルの再来を否定できないでいる。

1ドル400円から500円になれば日本のインフレもすさまじいものとなるだろう。日銀への世間の「利上げ、QT要請」は非常に強くなる。それでも日銀は前述の理由で、何もできない。

なす術を失った日銀の信用失墜はすさまじく、ドル/円は天文学的数字に上昇していくと思うのだ。文字数の関係で、その後の進展は私の他の論考を参考にしていただきたい。

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