ビジネスシーンでは数字を理解する場面が少なくない。正しく読み解くためにはどうすればいいのか。伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗さんは「数字を鵜呑みにするのではなく、その数字にまつわる情報を適切に読み解きながら、その数字の正確性や信憑性を判断するといい」という――。
※本稿は、山口拓朗『読解力は最強の知性である 1%の本質を一瞬でつかむ技術』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「ファクト」と「個人の意見」を分けて扱う
読解で陥りがちな罠のひとつが「ファクトの抜け落ち」です。
ファクトとは「客観的な事実」を意味する言葉で、個人の価値観や感情に左右されやすい「個人の意見」とは分けて考えられています。物事を正しく理解するためには、まず「ファクト」と「個人の意見」を分けて扱う必要があります。
ファクトの多くは数字で示すことができます。
たとえば、カラオケの採点機能の点数は、歌の「上手・ヘタ」を判断するうえで有効なファクトになり得ます。音程、抑揚、ビブラート、ロングトーンなどの技術的な要素が基準に達していれば、高得点が出るわけです。
一方で、「私は、この人の歌が好き」という認識については、カラオケの得点とイコールとは限りません。
点数が低くても「この人の歌が心に響いて好きだ」と感じることもあるのです。これは、ファクトではなく「個人の意見」です。
このように、「ファクト」と「個人の意見」はどちらが大事ということではなく、まったく次元の違うものだということを知っておく必要があります。
ビジネスシーンでは、とくに「ファクト」が重視されます。逆に、「私は◯◯だと思う」「△△さんの意見は常に正しい」のように、(根拠やファクトなく)個人の意見に依存しすぎている人は注意が必要です。
たとえば、あなたがレストランチェーン店のエリアマネージャーで、新しくオープンした店舗Aに視察に行ったとしましょう。
以下は、あなたが視察現場で収集したデータです。