ほかのレストランチェーンとの大きな違い

サイゼリヤは安価ですが、それは価格競争の結果ではなく、コスト削減の成果です。サイゼリヤには他店がハンバーグをいくらで出しているから、同じ価格にするという発想はありません。つまり、「1円でも安く」は追求していても、価格競争には与していないのです。そこが、ほかのレストランチェーンとの顕著な違いで、おもしろいところです。

加藤一隆『「おいしい」を経済に変えた男たち』(TAC出版)

メニューの数が少ないのも、安さを追求した結果だというのは、前述したとおりです。サイゼリヤは、他社が提供しているからとか、ブームだからといった理由でメニューを増やしたりしません。おいしくて安価で仕入れることができる原料や材料、あるいは自社栽培、製造の原料や材料で特徴を出せるメニューを開発し、人気商品に育てる努力をします。そこでも、他社と競争はしていないのです。ほかのチェーンも、以前はお客さんに喜んでもらえるファミリーレストランを志向していました。が、多店舗経営を拡大し、さらに日本経済が長期低迷に苦しむという時代背景にさらされるなかで、利益至上主義に陥り価格競争に走ってしまいました。

しかし、「お客さんが喜ぶこと、従業員が幸せになることをやっていれば利益はあとからついてくる」という信念を持っていた正垣さんは、ぶれることがありませんでした。「価格」にはこだわりましたが、利益は結果であり目的ではありませんでした。だから、ここまで続いたのだと思います。

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