これを可能にしたのが、待ち時間の算出ロジックです。スシローは2015年から待ち時間のデータを蓄積しデータを解析することで何度も改良を重ね、的確な待ち時間を算出できるロジックを構築するに至りました。
このようなさまざまな取り組みで、スシローはコロナ禍でも新規出店攻勢をかけ、2020年10月から2021年3月までの半年間で24店舗を増やしました。そのうえ、2020年度回転寿司チェーン売上高(連結)では、並み居る競合の中でトップの2049億円を計上し、コロナ禍でも最高業績を叩き出すことに成功したのです。
生産性を高める試みがコロナ禍でヒットした
コロナ禍では、顧客が外食による感染を恐れたことに加え、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により外食店舗の営業時間制限が設けられたことから、店舗に来店する顧客数が平常時に比べ圧倒的に減少しました。経営上の問題点は、顧客減少による収益の圧迫であることが明白であったことから、政府による財務支援が行われる一方で、企業には効率性を高める経営が求められました。
スシローも例外ではありませんでしたが、実際には、スシローは世の中がコロナ禍に入る以前から生産性を高める試みを行ってきました。たとえば、店舗内の無人化による非接触の追求では、非正規雇用の時給が上昇し始めた頃から、自動機器を導入するなど生産性を高める施策を試してきました。そうした試みがこのコロナ禍というタイミングで非接触という価値を生むようになったのです。
他方で、寿司ネタの注文データを収集し、今どういう寿司ネタを流したら顧客に皿を取ってもらえるかというデータ解析も長年行ってきました。これは、元々ロスを無くしたいという思いから取り組んできたことですが、効率性を追求していく中で顧客満足度の向上も図ることが可能となりました。
スシローでは、原価の高いメバチマグロ2貫を120円で提供しているように、どのネタも新鮮で身の厚い割には、価格が安く設定されています。それゆえ、顧客の間には「安いのに美味しい」という評判が定着しています。なぜ、スシローはこのように寿司を低価格で顧客に提供できるのでしょうか。それは、以下の3つの理由に集約されます。