外国人観光客が東京に惹かれるワケ

東京は不思議な街だ。清潔さと猥雑さが同居し、世界中のあらゆる旅行客を惹きつけている。その代表例が新宿だ。

高層ビルが並ぶ新宿副都心はモダンな街並みの最たる例だ。新宿駅の反対側、東口を出て歌舞伎町へと足を踏み入れれば、ネオンきらめく雑居ビルに囲まれた異空間が広がる。

夜の新宿 歌舞伎町
写真=iStock.com/fotoVoyager
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表通りを抜けてさらに路地裏へと迷い込めば、瞬く間に碁盤の目は崩れ、縦横無尽に延びる路地に点在する小さなバーや商店との新たな出会いが待っている。

近年盛んな大規模再開発の事例を除き、東京の街並みの多くは自然発生的に発展してきた。新宿など大都市に限らず、比較的小さな東京の駅においても、ランダムに延びる入り組んだ道沿いに住宅と商店がないまぜになって存在している光景はおなじみだ。

これに外国人観光客は熱い視線を向けているようだ。

こうした東京の街並みは、都市計画に沿って整然と整備されたニューヨークやシカゴ、パリ、マドリードなどと比較すると、猥雑で暮らしにくいように見える。だが、無秩序に広がる都市の姿が実は非常に合理的に機能していると、海外で再評価されている。

「東京は2つの顔をもつ都市である」

ブルームバーグは今年7月、東京のユニークな都市構造を分析する記事を掲載した。

東京は政府主導の計画によって鉄道網整備や安全な街づくりが進んだと同時に、入り組んだ薄暗い路地裏では自然発生的に店が発生し、都市を活気づけているとの分析だ。トップダウンの計画と無秩序な活気が同居することから、記事では「東京は2つの顔をもつ都市である」と指摘されている。

訪日外国人がこぞって足を運ぶ新宿・ゴールデン街は、後者の好例といえる。決して広くない敷地に個性豊かな店舗が200軒ほどひしめいており、日本酒をとことん楽しめる飲み屋やカレーに力を入れた店、そして猫と触れ合えるバーなどが所狭しと並ぶ。薄暗い路地を歩きながら興味津々に店を巡る観光客がいる一方、常連は慣れた足取りで2階のさらにディープな空間へと通う。