氏は一方で、東京は「革新的な設計」により狭小地にもかなり高さのあるビルが建つとし、「このコンセプトは東京などの場所で大変な成功を収めている」と論じている。幅のない雑居ビルが並ぶ光景は決して美しいものではないようにも思えるが、都市空間を活用する「クリエイティブなアプローチ」だとブロンダー氏は捉えたようだ。

自然発生した人間中心の街づくりへの評価

住宅のごく近隣にバーや商店が並ぶ光景は、海外客や商店主にのみ恩恵をもたらしているわけではないようだ。必ずしも碁盤の目に整備されておらず、地区利用も雑然としている日本の街並みは、時代と共に都市がボトムアップで発展してきたことの証左でもある。その街の住民がいきいきと暮らせる人間らしい街づくりを体現しているとして、オーストラリアの専門家の注目を集めている。

シドニー大学のレベッカ・クレメンツ研究助手(交通・インフラ運営学)は、豪ニュース・評論メディアの「カンバセーション」に寄稿し、オーストラリアの都市は日本の都市設計に学ぶべき点があるとの見解を発表している。

オーストラリアでは車通学が70%を占めるが、日本では徒歩と自転車通勤を合わせると全体の約98%に達するという大きな違いがあるという。このようなデータをもとに、日本では車が不要な範囲に、人間を中心とした街並みがまとまっていると論じている。

氏は、日本ではスーパーブロックが自然発生的に体現していると考えているようだ。スーパーブロックとは都市計画の概念のひとつであり、住宅、商店、公共サービス施設などを街区内に配置し、身近な範囲内で暮らしやすい都市を設計する手法だ。これは通学の利便性にもつながっている。子供がひとりで通学する姿は日本ではおなじみだが、オーストラリアでは徒歩通学は必ずしも多数派ではない。

今年は日本のテレビ番組「はじめてのおつかい」(日本テレビ)がNetflixで配信され、海外の視聴者の間で注目を集めた。保護者が車で送迎する通学スタイルが主流の現地では、子供がひとりで街を歩き登校する様子に目を疑ったようだ。

日本の治安のよさも徒歩通学の要因となっているが、根本的には住宅と学校が生活圏内に近接しており、車を必ずしも必要としない人間中心の街が自然と出来上がっている影響が大きいだろう。

電車に乗ってどこでも行ける利便性

鉄道を中心とした公共交通の充実も、日本の都市の長所として認知されている。都市評論家のコリン・マーシャル氏はカルチャー情報サイトの「オープン・カルチャー」への寄稿を通じ、「しかし、日本の首都独特の際立った都市計画を地面の下から支えているのは、比喩的にも実際にも、その地下鉄網である」と解説している。

JR線や地下鉄の電車が走る東京
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同氏は、アメリカでは自動車中心の街づくりが進み、都市の多くのスペースが駐車場に奪われたと述べ、公共交通の活用に成功した日本の事例と対比している。