地元の漁業を学ぶことからスタート
なにができるか皆目見当もつかないが、私も何か途方もないことが始まるのではないか、そんな予感にウキウキした気持ちに包まれていた。
とはいえ、漁業どころか、魚そのものについての知識も皆無に等しい状態で新規事業の提案などできるはずがない。
そこでさっそく、実際に萩大島に渡って、長岡たち島の漁師が、どんな漁をしているのかを見たり、教えてもらったりすることから取り掛かることにした。
すると、いろいろなことがわかってきた。
萩大島の漁法は巻き網漁が中心である。巻き網漁は、6〜7隻の船が船団を組んで行う漁法。長さ600メートル、深さ250メートルほどの巨大な網で、魚の群れを囲い込む。網の下には鉄のロープが付いており、これを巾着のように絞ることで、魚を包み込んで獲る。
「流通に乗らない魚」を売ったらどうか…
出航する様子や港に戻ってからの彼らの作業を見学したところ、素朴な疑問が湧いてきた。
漁で獲ってきたアジやサバは漁船から水揚げされると、漁協が運営する市場に運び込まれる。漁協が競り、仲買人が競り落とすことで価格が決定。それを仲買人が「卸し」に引き渡し、そこから小売店で販売され、私たち消費者に届く。
これが基本的な流れなのだが、メインの商品以外で網にかかった魚は、先のルートとは別の扱いになっていた。1つの箱に無造作に詰められ、仲買人が威勢良く競り落としていくこともなく、見る限り相当に安価で取り引きされている。
翌日の競りまで市場に置かれたままだったり、最悪の場合、捨てられたりする魚もありそうだ。そうした様子を見ていて、「これを自分たちで売れば、いいのではないか」、そんな思いつきが浮かんだ。
これが後に私たちが手掛けるビジネスが生まれたきっかけだった。
三方良しのビジネス
タダ同然、または捨てられる魚がおカネに変われば、単純に漁師の収入増になる。なにしろ魚自体は新鮮そのものだ。ただ、買い手がつかないことで、まったく手間を掛けられることなく市場に投げ込まれる。