山口県に本社を置く「GHIBLI」は、「船団丸」ブランドで漁獲した魚を消費者に直接届ける自家出荷ビジネスを展開し、国内外の注目を集めている企業だ。設立から10余年を経て、自家出荷事業は大きく成長し、「船団丸」ブランド事業は全国展開、農業分野へも進出している。2010年に24歳、「月給3万円」で事業の代表に就任した坪内知佳さんは「今、私は日本の漁業そのものを変えたいと本気で思っています」という──。(第2回/全2回)

*本稿は、坪内知佳『ファーストペンギン』(講談社)の一部を再編集したものです。

萩大島船団丸の漁師たちと坪内知佳さん。10年の壁を乗り越え、仲間も増えた。最近では女性の漁師志願者も出てきているという。
写真=畑谷友幸
萩大島船団丸の漁師たちと坪内知佳さん。10年の壁を乗り越え、仲間も増えた。最近では女性の漁師志願者も出てきているという。

10年の歳月を経て

前編から続く)

私たちが萩大島はぎおおしま船団丸を立ち上げてすでに10年以上が経った。赤字続きだった時期をなんとか乗り切り、黒字化も果たした。

私たちが手掛ける「粋粋いきいきボックス」のような、いわゆる自家出荷流通は全国に広がる機運がある。また、私たち自身の事業もさらに多角化している。

その間の七転八倒の日々を振り返り、拙著『ファーストペンギン』にまとめた。そして今回、なんと船団丸の活動が俳優の奈緒さん主演でドラマ化されることになったのだ(日本テレビ系列「ファーストペンギン!」)。

いろいろなことが起こりすぎて、この間の出来事の1つ1つは短い記事ではとても書ききれない。書籍やドラマもぜひご覧いただきたい。

立場の違いを乗り越え、10年たった今、手を取り合う

私たちの挑戦をずっと見てきたのだろう、今では、かつて漁協で先頭に立って船団丸に嫌味を言っていた漁協の幹部から「船団丸に入れてくれないか」という言葉まで聞かれるようになった。

漁協の現場で働く人たちの態度も、当時では考えられないほど私たちに好意的になってきた。以前は使用が認められなかった土地なども快く貸してもらえるようになった。

多くの漁師がコロナで売り上げを落とすなか、萩大島船団丸だけが順調に売り上げを伸ばしている。赤字を垂れ流して漁協の施設や土地を遊ばせておくよりは、船団丸として使わせてもらい、地元に使用料だけでも還元したい。

今後はさらに漁協の人たちと一緒にやっていく場面が増えていくだろう。こういう関係になるまでに10年以上の歳月が必要だったのだ。