「10年の壁」を越えてたどり着いた場所

今、私たちはなんとか軌道に乗り始めている。これまではずっと薄氷を踏む思いで過ごしてきたが、財務面では昨年あたりからようやく息がつけるようになってきた。おカネが入ってもそのまま出て行く状態から、少しだが通帳におカネが残るようになっている。

認知度も上がり、仲間も増えた。現在、萩大島船団丸で船に乗っている漁師が17人、GHIBLIのスタッフは21人を数える。

これまで目の前の課題をどうクリアするかということばかりを考えていたが、俯瞰ふかんして先の戦略を立てられるようにもなってきた。ECサイトの構築や加工場の建設はまさにその一例だ。

しかし、これで安心と言える状況では到底ない。これから競争相手も増えて規模の維持は困難になるだろうし、私がなんらかの事情で船団丸を抜けたら、このビジネスは止まるだろう。まだまだやらなければならないことはたくさんある。

シングルマザーとして、経営者として…

シングルマザーとして、そして経営者として働くのは、正直大変だ。長男に「お家に普通にいるママの家の子がいい!」と泣きながら言われたり、イヤイヤ期の次男に「お仕事、ダメ。絶対!」と言われたりするのはさすがにこたえた。

デジタルネイティブ世代の次男はパソコンを使いこなし、私がオンラインミーティングをしていると横から「バイバイ」と言って通話を切ってしまうこともあった。そんなときも温かく見守ってくださった取引先や提携先、理解ある皆さんのご協力に感謝している。

私自身がその苦労をわかっているから、GHIBLIにはシングルマザーを含め、女性社員も積極的に採用している。自分と同じ立場で頑張っている人がいると、きっと励みになるし、孤立して絶望を味わうこともない。特に選んで雇用したわけではないが、気が付けば「母親」ばかりの職場になっている。