寿司屋では「かっぱ巻き、干瓢巻き、納豆巻き」

ドイツでは、特に若い人たちの間でヴィーガンが増えている。べジタリアンよりさらに過激で、肉や魚だけでなく、動物由来のものは牛乳も卵もチーズもすべて避けるのがヴィーガン。革靴やウールのセーターさえも嫌う。友人の息子もヴィーガンで、せっかく日本にやってきてお寿司屋に行っても、かっぱ巻きと、干瓢巻きと、納豆巻きしか食べないが、それでもいたく満足している。ただ、木綿の服や靴しか着用しないので、冬のドイツではしょっちゅう風邪をひく。

手巻き寿司
写真=iStock.com/yukimco
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ちなみに緑の党では、別に党規に肉を食べるなと書いてあるわけではないが、肉を毛嫌いしている人が多い。肉を食べず、自転車に乗るのが彼らの正道だ。自動車はダメ。飛行機などもってのほか。理由は温室効果ガスだ。

世界における温室効果ガスの内訳は、76%がCO2。次に多いのがメタンで16%。そして、亜酸化窒素が6.2%、フロン類が2%と続く(IPCC第5次評価報告書より)。ドイツでは、温室効果ガスのうち、主に酪農・畜産業に由来するメタンや亜酸化窒素などの比率が20%と高い。日本の場合、食生活の違いもあり、メタンや亜酸化窒素は微々たるもので、圧倒的なのはCO2。これが9割以上を占める。

「農家は違う場所に引っ越すか、廃業するか…」

ただ、酪農・畜産業は最近、温室効果ガスの排出以外でもしばしば槍玉に上がる。例えば、牛肉1キロを生産するために、1万5500リットルの水と、16キロの穀物が必要だとか、飢えている人たちがたくさんいるのに、世界の農地の3分の1近くが家畜の飼料の栽培に使われているとか、ブラジルでは牛の放牧のため、毎年、貴重な熱帯林が潰されているといったようなことが指摘され、肉を食べるには良心の呵責を覚えなければならないような雰囲気が年々強くなっている。

今年の6月の終わり、オランダで農民の大規模なデモが起こった。背景にあるのは、EU、およびオランダ政府の進めようとしている環境政策だ。この政策により、特に自然保護地域周辺の酪農・畜産農家が窮地に陥っている。問題は窒素の排出。議会で農民の利益を代表しているファン・デア・プラス議員曰く、「この窒素の排出基準を守るには、農家は違う場所に引っ越すか、廃業するかしかなくなる」

ただ、オランダ政府も譲らない、譲れない。というのも、オランダはEUの窒素許容値をすでに30年間もやぶり続けているといい、ついに2019年、司法により、EUの基準値を守るべしという判決が出されたからだ。