おかしいと思っても反対意見を言いづらい

農業改革として進められようとしていることと、EVシフトや太陽光パネル奨励における共通点はまだある。そのための財源は税金なのに、その果実は一般国民ではなく、主に資本家の手中にだけ落ちることだ。しかも、この風潮に違和感を持っても、環境重視という御旗を掲げられると、反対意見の発信は極めて難しい。

例えば、内燃機関の車はEUでは35年に新規登録が禁止される予定だが、これに反対すると、環境無視の烙印を押されかねない。食肉に関しては、昨年、牛の幹細胞を増殖させ、それを材料に「牛を殺さずに」、「本物の肉」が3Dプリンターで作れるようになったというニュースが流れた。動物を殺して作った従来の肉を食べられなくなる日は、案外、近いかもしれない。

温室効果ガスの有無だけで善悪を決めていいのか

ただ、先進国で人造肉が台頭し、オランダは肉ではなく、チーズとチューリップを作るようになり、すべての屋根に太陽光パネルが載り、EVが道路にあふれたとしても、世界のあちこちで環境汚染で苦しむ人々や、飢餓で命を落とす子供たちは減らないだろう。おそらく、先進国の豊かな人々が、良心の呵責なしに車に乗ったり、肉を食べたりできるようになるだけだ。そして、新しい産業構造の下、モラルを前面に押し出した新しいビッグテックが生まれる。

しかし、繰り返すようだが、その利益は普通の人々の生活を潤すことはほとんどないだろう。緑の党や環境団体はこの流れの中で、どんな役割を果たそうとしているのかが、私には不明だ。

再エネに重点を置きすぎた従来のドイツのエネルギー政策の欠陥が、ウクライナ問題で浮き彫りになり、現在、深刻なエネルギー危機に見舞われているように、こんなことをしていると、いずれ農業国オランダにさえ食糧危機が来るかもしれない。温室効果ガスの有無だけでことの善悪を決めるのは、農業に限らず、すべての部門であまりにも弊害が大きすぎる。先進国の国民の負担を軽減し、途上国の発展にも利する政策に切り替えるべきだ。

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